第4話 研究施設
陽太が覚醒した。
だが、陽太はその場で気を失って倒れてしまった。
俺は陽太が覚醒したことが嬉しかった。
(これで、陽太と一緒に居られる)
だが、ふと聞こえてしまった研究員の言葉に、俺は耳を疑った。
「ピュアか…」
「同じ双子だからクロスになると思っていたんだがな」
「今此処で研究しているのはクロスやトライだからな」
ピュアブリード、と言うのはシンドロームを1つしか所持していないモノを差すらしい
クロスは2つ、トライは3つと
俺はバロール/オルクスのクロスだ。
「アレはどうするか」
「ソレなら実験台にするのはどうだろうか?No.2954886と性質は似たもののハズだ。耐久テストに使う事位できるだろう」
「陽太…!!陽太は、陽太は何処だ!!?」
あの会話を聞いてから、胸騒ぎがしていた。
陽太が何処かへ消されてしまうんじゃないか
俺の知らない何処かで消されるのではないかと言う恐怖が増幅した。
「No.2954887の事か?検診中だ。後にしてやれ。」
「検診って…昨日だってして…」
No.2954887 と言うのは陽太の左脇腹に押されたバーコードに書かれているコード番号だ
俺は1つ前のNo.2954886 陽太と同じ場所にバーコードがある。
「ソレよりNo.2954886、お前に客だ」
「客…?何だってこんな時に…」
一刻も早く陽太を安全な場所に連れて行かなければいけないというのに
「やぁ、元気かい」
「お前は―」
渋々自分の客だ、と言う人物の居る元へ足を運べばそこには黒い帽子に黒いスーツを着た男が立っていた。
黒い髪に金色の瞳。年はよくわからない。
実はこの男は
俺達の保護者である。
正確に言えば陽太はこの人物を知らない。
俺と陽太がこの実験施設に来ることになった切欠となる男だ。
『オーヴァードとして生きていくのであれば、常識を学ぶ必要がある
君達にうってつけの良い施設がある。
そこであれば君達は身分を隠す必要はないし、何なら力の使い方も理解できる。何より一緒にいることができる。どうだ?』
そう、言われて連れてこられたのだ。
「元気だけど、陽太が居ないんだ」
「あぁ、弟君か。彼なら今頃君の身代わりになっているだろう」
「身代わり…!?それってどういう!!」
「研究員の会話を聞いていたんだろう?ソレならばお前の頭脳なら察しがついているはずだが?」
「・・・・・・」
「さて、此処での情報はどうだ?」
「クロスとトライを主に扱う研究所みたいだ。俺達の年齢くらいの子供を集めて実験してる。実験台にされて帰ってこなかった者もいれば、帰ってきたら人格が崩壊一歩寸前なものまで居た。……これがUGNのやることなのか?」
「ふむ…」
俺はこの男にこの施設を紹介された代わりに
この施設での情報を提供している。
―とは言え、子供を実験台にする様な所を勧める辺り怪しいことこの上ないのだが―
「UGNもピンからキリまで様々だ。それは我々も同じこと。
UGN、と言う大きな組織ではあるがその組織がさらに細分化されているからな。
支部により方針は大きく異なるだろう。」
「そんなものか。話を聞けば、UGNは正義感溢れた場所って聞いていたんだけれどな」
「そんなものだ。さぁ、もう面会の時間は終わりだ。戻ると良い」
「……おっさん」
「何だ?」
「約束は、忘れるなよ?」
「勿論だ、神崎 雪翔」
その日、陽太は帰ってこなかった。
3日くらい経った頃、陽太が帰ってきた。
「陽太、無事だったんだな」
「………あぁ、そうだな」
「?」
陽太はいつだったかと、同じ顔をしている。
心底どうでも良さそうな顔だ。
「雪翔、何か用?」
「3日も帰ってこなかったんだ。心配するだろう」
「そう、ありがとな」
「…?」
覚醒してからと言うものの
実験の所為か、陽太は日に日に心を閉ざしていった。
一つ一つ丁寧に扉を閉めている、そんな感じだ。
一体俺がいない間何をされているんだろうか
それを俺に理解することはできなかった。
ただ、確実に
神崎 陽太 という人物が壊れていくのを実感した。
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