第3話 サラマンダー5兄弟
俺に弟妹ができた。とはいっても、元がドット絵のサラマンダーしか知らない上に爬虫類の個体の見分けもつくはずもなく、更には同じ個体のサラマンダーであって名前は付かないのでどれがどの個体だか分からずにいる。
弟妹の区別用にこっそりあだ名をつけている。
やんちゃな弟、アカマンダ。桃色の鱗の妹、モモマンダ。体の大きい弟、デカマンダ。よく寝る妹、ネムマンダ。
アカマンダは元気はつらつで、住み処じゅうを縦横無尽に駆け回る。モモマンダは野花をじっと見つめている。デカマンダは大食らいで俺の倍は食べる。ネムマンダは寝起きが最悪で、無理に起こそうものなら暴れ狂う。
そんな俺達兄弟は、すくすくと育っていった。飯を取り合い、獲物を奪い合い、サラママダーに怒鳴られどつかれる日々。
頭の大きなトカゲの姿から、角が生えた。角といっても、鳴らすクラッカーみたいなサイズ感だ。
頭の大きなトカゲからデフォルメされたドラゴンのような容姿になったのだ。背中にはイボのようなものがある。恐らく、翼だろう。あの時は見る事はできなかったが、母の背には少し傷付いた翼があった。それは、RPGのドラゴンと同様にコウモリにも似た形状の翼だった。
俺を除く兄弟達は、少し飛ぶことができる。俺は翼が未発達だ。弟妹達が飛べるようになってあまり焦ることは無いが、彼らからの扱いが蔑ろになってきた。
「おい、木の実採ってこいよ」
「私、オニクの実と魚ね」
「俺には大量に持ってこいよ。どっさりとな」
「私の寝床のワラ、持ってきなさいよ」
「あぁ」
母に隠れて、弟妹達にこき使われては殴られる日々に俺は心身共に摩耗していた。
この時にはステータスが確認できるようになった。ステータスは10段階で表示される。
弟妹達は平均が4、5ほどに対し俺の場合は力2 素早さ2 知性4 魅力2 魔力4 幸運3。アヒルの泳ぐ通信簿のような数値だ。
能力の低さからいびられるようになったのだ。
大量のオニクの実と魚をふらふらしながら何とか運びだし、息をつく。
他の弟妹達の火がガスコンロならば俺の出せる火は精々ライター程度の火力。サラマンダーだというのに、能力にここまで差が出るとは。
弟妹達は受け取った獲物を母に渡して焼いてもらった。俺の分はこの中に無い。弟妹達の誰かが「あいつは一匹でもう食べたから」と言って俺の取り分を無かったことにしたからだ。
悔しいが、このモンスター社会では能力がモノを言う世界。能力が低く弱い俺の立場もまた弱い。
大量の餌を用意すれば体力を使う。僅かながら魚や木の実を採って食べた。新鮮な魚は臭みが少なく脂がのってうまい。甘い木の実はまるでミカンのような味がして食後の口直しには良かった。
水を受けると体の動きが鈍り、体力を消費するため相性が悪い。だが、何かを食べないと食材確保のための体力が持たない。
早いうちにこの場所を出ていこう。舌なめずりをした俺は、決意した。
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