第3話

田舎へ出発する日の朝、緊張と不安で暗い顔をして父の車へ


荷物を積め込む私に気付いた母


「大丈夫?具合でも悪いの?」気を使ってくれるのは有り難


いけどそりゃ具合も悪くなりますって、これからゴリラ婆ちゃ


んへ逢いに行く訳ですから!なんて勿論言えず


「大丈夫、ちょっと寝不足なだけだから」と愛想笑いで返す


のが精いっぱいだった


父の運転する車は快晴の中、快調に飛ばし渋滞にも巻き込ま


れる事なく順調に田舎へ向かっていた。突然、助手席の母の


スマホが鳴った


「もしもし、あ、お義母さんですか?」電話の相手がお婆ち


ゃんと知り私は、緊張した。同時にゴリラが器用に電話して


る滑稽な姿を思い浮かべ思わず独りニンマリした。何だ自分


結構割り切れてるのかなと少し安心


「あ、はい居ますよ、代わりますね。」不意に母がスマホを


差し出してきた。「ほら、ゴリラ婆ちゃん。」と


スマホ画面に通話先ゴリラ婆ちゃんと表示されてるのを目の


当たりにして改めて驚いた。緊張して電話に出てみる


「も、もしもし・・・ゴリラ婆ちゃん?」


「こんにちは、久し振りだね〜元気してたかぁ?。冷えた


そうめん用意して待ってっからねぇ」と一方的に話すゴリ


ラ婆ちゃん。その声は確かに聞き覚えのある婆ちゃんの声


で私は胸をなでおろした。少し話した後、電話を切り母へ


渡す。ゴリラ婆ちゃん相変わらず元気ねぇと母。隣で運転す


る父もニコニコと頷く。ひょっとしたらゴリラ婆ちゃんは、


あだ名なのかも知れない、私の知らない所でそんな遊びが


始まっただけなのかもしれない!そんな薄っぺらい期待を


抱いた私は、いざ到着した田舎の家の玄関引き戸の曇り硝


子に映った巨大な影にギョっとし軽く震え上がった。あの


体格、影からも伝わるあの迫力、・・ゴリラ婆ちゃんって


やっぱり・・・次の瞬間


「ただいまー」先頭の父が勢いよく引き戸を開けた。


つづく

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