第2話
ようやく訪れた梅雨明け。日が増す事に気温は上がり
分かりやすく私の体力・気力を奪ってゆく。冷房の効い
たオフィスは天国だが退社する頃の気温はまだ高く、家
へ着くまでにじっとりと嫌な汗をかくのでる
そんな日々を終えようやく迎えた盆休み。最終出勤日
周りの同僚は、やれ彼氏とずっと一緒に過ごすだの、
やれ友達の結婚式へお呼ばれされてるのだの楽しいイ
ベントへの期待を口々に胸を踊らせていた。私はとい
えば
「今年は、ゴリラ婆ちゃんへ逢いに行くの」など口に
した日には、きっと休み明けから私は頭のオカシイ女
として職場の全員から敬遠されるだろう。
翌日、私は荷物1式と土産物を積んだ車で実家へ向か
っていた。母からゴリラ婆ちゃんと伝えられた日から
そのキーワードが何度も脳裏をかすめ私を不安にさせ
ていた。田舎への土産を自然にバナナにしてしまいそ
うだった程に。実家に着いた頃は、すっかり夜になっ
ててすぐに夕飯となった。食卓を囲む父母は、至って
普通だ。明日ゴリラ婆ちゃんに逢う緊張感を持ってる
のは私だけだった。ここでまた聞き直せば、流石に親
の機嫌を損なわせると思い話題はあえて他のものを選
んだ。深夜、布団へ入った私はいよいよドギマギして
きていた。得体の知れない相手に逢う恐怖は、どこか
就職活動中の面接前夜とも似ている。もうここまで来
たら腹をくくるしかない、そう決め眠りに着いた。
つづく
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