ゴリラ婆ちゃん
右京
第1話
コロナが世界を席巻した今年、私は、田舎へ帰る事に戸惑った。
折角感染を免れてるのに、リスクを負ってまで帰省する必要性
を感じなかったからだ。ご先祖様だってきっと分かってくれる
に違いない。その旨を実家に伝えると予想だにしてなかった返
答が私のド肝を抜いた。
「何言ってるのー。年一回の事なんだから帰ってきなさいよー
田舎のゴリラ婆ちゃんだって逢えるの楽しみにしてるのにー」
電話の先の母の言葉は、不自然に自然過ぎて私を黙らせた。
ゴリラ婆ちゃんって何?。今まで何度も田舎へは帰省してるけ
ど一度たりとも聞いた事が無い単語が、頭の中を駆け巡る。
「あの、ゴリラ婆ちゃんって・・何?」恐る恐る母に聞いてみた
「あなた何言ってるの?、もう暑さで参っちゃってるの?」
ふふふと電話先で笑う母の困った様な笑顔が脳裏に浮かんだ。
駄目だこのままでは、らちが明かない。自分の目で確かめる
しか方法は無いわ。
必ず帰ると母へ伝え電話を切った。盆休みは、来週から。そ
の間私は、変な緊張感を胸に生活する事が確定してしまった。
色々な想像が現れては消えて行った。顔だけゴリラなのか、
全体ゴリラなのか、言葉はしゃべれるのか、そもそも本当に
婆ちゃんなのか。期待と不安が入り混じり私の生活に別な
意味の張りを与え始めていた。
つづく
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