第5話


それが恋だと気付いた瞬間、どうにも居たたまれなくなったのが一昨日のことである。どうやら、私は入学してから’友人’を作るより先に「好きな人」を作ってしまったようで。

名前は吾妻颯太くん。何処となく掴みどころがない雰囲気に目が離せなくなってしまった。


気だるげな所作が酷く様になっていて、近寄り難そうな雰囲気が印象的だった。


でもそれは、周りもそうみたいで、彼はなんていうか観賞用だった。


・・・それこそ誰かが彼に話しかけたりすれば、それだけで「抜け駆け」だと称されてしまうんじゃないかってくらい。私はこの恋に関して、気持ちを伝えようとは微塵も思っていなかった。― 私はそんなに世間知らずじゃない。


一年間、この思いは胸中に留めておこうと思った。・・・実の所、一瞬で「叶わない」って理解る位なら、一目惚れなんてしたくなかったけれど。

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