第8巻「イカとタコとクラゲとその他」

 ここは、

 無人ゆえに誰にも読まれることのない資料が溢れているところです。

 長い間、誰にも読まれることがなかったため、自らに書かれた内容すらとっくに忘れてしまった資料たちがここにいます。

 おや?

 どうやら、誰もいないはずの無人資料館に誰か迷い混んだようですね?

 あの人はどんな資料を手にして、そこにはどんな内容が書かれているのか、観察してみましょう。




【イカについて書かれた資料】

 イカとは、地球の守護神である。

 イカは数億年前に地球で誕生した。

 それ以来、地球を我が物にしようとする外宇宙からの侵略者より、密かに地球を守り続けてきた守護神である。

 時として侵略者でもある天敵の生物とも手を組みながら、地球を侵略者の魔の手から守り続けてきた。

 侵略者にとってイカの存在こそがマキシマムであった。

 そして、今でもイカは地球に住み着いた侵略者と戦いを続けている。

 イカとは、地球の守護神である。




【タコについて書かれた資料】

 タコとは、外宇宙より飛来したイカの天敵である。

 それは、地球歴四十億年前後のこと。

 タコは宇宙の遥か彼方より氷の塊と共に地球に飛来し、地球の侵略を開始した。

 しかし、そこにはイカがいた。

 タコとイカの地球を巡っての争いは、他の地球生物のマキシマムを促進させるほどに苛烈を極めた。

 だがある日、近隣の星である太陽系内に誕生した生物が地球に侵略を開始した。

 その時、タコとイカは数億年続いた争いの歴史上初めて手を組んだ。

 その侵略者こそがだった。

 タコとは、外宇宙より飛来したイカの天敵である。




【クラゲについて書かれた資料】

 クラゲとは、歴史を語らぬ眠り姫である。

 海、空、地中、宇宙、様々なところに浮かぶだけのクラゲは宇宙が誕生する前よりずっと浮かび続けている。

 そして、宇宙誕生前からその全ての歴史を記憶し、マキシマムへと伝えている。

 しかし、クラゲは決してそれを口に出して語ろうとはしない。

 クラゲは口を閉ざし、眠り姫の様にただふわふわと浮かんでいるだけなのである。

 クラゲとは、歴史を語らぬ眠り姫である。




木耳キクラゲについて書かれた資料】

 木耳キクラゲとは、クラゲが歴史を収集するための手段の一つである。

 それを知ってか知らずか、ヒトは木耳キクラゲに対してクラゲと付く名を付けた。

 しかし、実際にはしか持たない生物が、木耳キクラゲがクラゲと関連しているとは分かるはずもなく、クラゲと付く名前が付けられたのは偶然あるいはマキシマムの影響でしかない。

 木耳キクラゲとは、クラゲが歴史を収集するための手段の一つである。




【うらぃぇてぃそろくについて書かれた資料】

 うらぃぇてぃそろくとは、決して声に出してはならない言葉である。

 うらぃぇてぃそろく、または、ウラィェティソロク、と記載されるこの言葉はヒトの生み出した言葉であり、何らかの言葉である。

 弱者にとって反撃の言葉でもあり、無力の象徴でもあるこのという言葉は、決して口に出してはならない。

 一度でも口に出してしまえばもはやマキシマムは避けられない。 

 うらぃぇてぃそろくとは、決して口に出してはならない言葉である。




「帰れないから戻ってきたけど、ワニとサメに続いてイカとタコ、クラゲと木耳が関連してる気がする。つか、うらぃぇてぃ…っと、言っちゃダメなんだっけ?うら何とかって気味悪いなあ…」




 おや?

 読んでいる途中で帰ってしまいましたね。

 無事に帰れるといいのですが…

 もし、皆さんが無人資料館に迷い混んだときは、皆さんの手で正しい内容に直してあげてください。

 私?

 私はので資料を開くことはできません。

 久しぶりの人のお客さんが来て、書かれた内容を読んでもらえたので資料達も喜んでいます。


 では、次のお客さんが来るのをお待ちしています。



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