第6巻「カメレオンとザンギエフとその他」
ここは、無人資料館。
無人ゆえに誰にも読まれることのない資料が溢れているところです。
長い間、誰にも読まれることがなかったため、自らに書かれた内容すらとっくに忘れてしまった資料たちがここに棲んでいます。
おや?
どうやら、誰もいないはずの無人資料館に誰か迷い混んだようですね?
あの人はどんな資料を手にして、そこにはどんな内容が書かれているのか、観察してみましょう。
【カメレオンについて書かれた資料】
カメレオンとは、天井のシミである。
天井のシミは、顔に見えたり、虫に見えたり、幽霊に見えたり、状況により他にも様々ものに見える。
天井のシミを数えている間に世界は回り、男の子は男になり、女の子は女になる。
それはまさにマキシマムである。
つまり、天井のシミであるカメレオンを数えることでマキシマムを誘発することが可能なのである。
ただし、カメレオンのほほ全ては天井のシミだが、天井のシミはカメレオンではない場合が多いので注意である。
カメレオンとは、天井のシミである。
【ザンギエフについて書かれた資料】
ザンギエフとは、世界随一の吸引力を持つクリーナーである。
ザンギエフに近づけば
どんなにしつこい汚れもザンギエフが近づいたら終わり。
吸って吸って吸い付くす。
それはさながら強力な重力により光さえも吸い込んでしまうブラックホールの如し。
ザンギエフが通るところ、塵も生物も光も闇もなにも残らない。
ザンギエフはただ吸い付くす。
しかし、ザンギエフが吸えないものが一つだけある。
それは、人の心。
人の心はマキシマム、それだけは吸うことはできない。
ザンギエフとは、世界随一の吸引力を持つクリーナーである。
【トロンボーンについて書かれた資料】
トロンボーンとは、バスタブに浮かぶゆずである。
バスタブに浮かぶゆずを見ると、人はそれを手に取らずにはいられない。
だが、
これを防ぐにはもはやピクニックしか方法は残されていない。
トロンボーンとは、バスタブに浮かぶゆずである。
【枕について書かれた資料】
枕とは、
ビニール傘は開かなければ爆発することもないし、ビームも出ない。
ビームも出ないし爆発もしない、そんなビニール傘などもはやキャッチボールにも使えない。
開かなくなり、枕と化したビニール傘を再びビニール傘に戻すにはマキシマムさせるしかないが、ビニール傘は開かなければマキシマムすることもないのでどうあっても枕は枕のままでしかない。
枕とは、開かないビニール傘である。
【ペガサスについて書かれた資料】
ペガサスとは、お茶漬けに浮かぶ海苔である。
お茶漬けとは、
そのお茶漬けに浮かぶ海苔、即ち、ペガサスは心にマキシマムされた悠久の記憶。
ペガサスとは、お茶漬けに浮かぶ海苔である。
「ははは、ザンギエフの資料だけ読むと懐かしいゲームを思い出すなあ…」
おや?
読んでいる途中で帰ってしまいましたね。
無事に帰れるといいのですが…
もし、皆さんが無人資料館に迷い混んだときは、皆さんの手で正しい内容に直してあげてください。
私?
私は人ではありませんので資料を開くことはできません。
久しぶりの人のお客さんが来て、書かれた内容を読んでもらえたので資料達も喜んでいます。
では、次のお客さんが来るのをお待ちしています。
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