第4巻「鍋と夢と朝顔とその他」
ここは、無人資料館。
無人ゆえに誰にも読まれることのない資料が溢れているところです。
長い間、誰にも読まれることがなかったため、自らに書かれた内容すらとっくに忘れてしまった資料たちがここに棲んでいます。
おや?
どうやら、誰もいないはずの無人資料館に誰か迷い混んだようですね?
あの人はどんな資料を手にして、そこにはどんな内容が書かれているのか、観察してみましょう。
【鍋について書かれた資料】
鍋とは、憎悪の塊である。
何かを憎んで憎んで憎み抜いた末に生まれる勇気と言う名の悪魔、それこそが憎悪と呼ばれるものである。
憎悪は時を経て海に還り、やがて空気中へ飛散して生物とマキシマムし、ついには憎悪の塊となる。
それはまさに生物としてのマキシマムが終焉したことを意味する。
鍋とは、憎悪の塊である。
【夢について書かれた資料】
夢とは、忘れられない忘却の日々である。
虚空の彼方へ捨て去ったはずの忘却の日々は、ほんの些細な大事件で再び甦り、忘れられないものとなる。
忘れたことすら忘れてしまうこと、それこそがまさに夢の中の夢であり、何よりも尊く儚い存在である。
夢を完全にマキシマムすることは何者にも容易ではないことであるが、時にはマキシマムせざる得ないものである。
夢とは、忘れられない忘却の日々である。
【朝顔について書かれた資料】
朝顔とは、氷の弾丸である。
地球が誕生してから十億年程度が経ったある日、太陽の中で結晶化した氷の弾丸が地球に近づいた隕石を撃ち落とし、それが地球に初めての雨を降らせた。
そして、それから長い間降り続けた雨がマキシマムして海となり、そこに生物が誕生した。
つまり、朝顔が発生したことにより地球に生物が誕生したことになるのである。
しかし、これには諸説あり、氷の弾丸は朝顔ではなく夕顔であると考える資料も存在するが、基本的には朝顔と夕顔には何の因果関係もないため、どちらかが間違っていることは間違いない。
朝顔とは、氷の弾丸である。
【怠け者について書かれた資料】
怠け者とは、嘘つきなキツネである。
嘘つきなキツネは、働き者で心優しきガーディアンではあるが
その嘘はどうってこともない嘘から、あらゆる因果律をねじ曲げてしまう嘘もあり、これには時の番人である
しかし、そんな嘘つきなキツネも一つだけついたことがない嘘がある。
それは、俺(私)は嘘をついたことがない、と言う嘘である。
怠け者とは、嘘つきなキツネである。
【田舎育ちについて書かれた資料】
田舎育ちとは、爆発する冷たいじゃがいものスープである。
絶対零度寸前になるまで温められた冷たいじゃがいものスープは本来の熱さを忘れてしまい、絶対零度になると同時にメルトダウンを引き起こして爆発する。
その現象を田舎育ちという。
しかし、その現象を止める
それはマキシマムである。
温められた冷たいじゃがいものスープが絶対零度になる前にマキシマムさせることにより田舎育ちを防ぎ、悲しみの命綱を作り出すことが出来る。
一度でも悲しみの命綱になった冷たいじゃがいものスープは次に絶対零度になってもメルトダウンせず、二度と爆発することはなくなり、絶対に田舎育ちは起こらない。
田舎育ちとは、爆発する冷たいじゃがいものスープである。
「夢か…俺もまた頑張ってみるかな………」
おや?
読んでいる途中で帰ってしまいましたね。
無事に帰れるといいのですが…
もし、皆さんが無人資料館に迷い混んだときは、皆さんの手で正しい内容に直してあげてください。
私?
私は人ではありませんので資料を開くことはできません。
久しぶりの人のお客さんが来て、書かれた内容を読んでもらえたので資料達も喜んでいます。
では、次のお客さんが来るのをお待ちしています。
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