第41話 わかれみち


圭介たちを見送り、上にある電光掲示板を見ると15分後くらいに次の電車が来ることが分かった。


「次の電車で合流するか。」


「、、、。」


「下山田?」


返事がなかったので下山田の方を振り向き名前を呼んだ。


「あ、あのさ!行きたいとこあるの思い出したんだけど。」


「行きたいとこ?どこ?」


「こっち!」


そう言うと下山田は俺の手を引っ張り、圭介たちが乗った電車とは逆の電車に乗り込んだ。


「え、ちょっ!こっち逆だろ。」


「うん。この電車に乗って次の駅に行きたいとこがあるんだ。」


「そうなのか。」


逆の電車に乗り込んで空いている席に座ると、少しして扉が閉まり電車が発車した。


「次の駅って有暮か?」


「あ、うん、そうだね。」


「じゃあ圭介たちに連絡しとくか。」


「いいよ!わざわざこっちまで来て付き合ってもらうのもあれだし。なぜか一緒にいる大和くんだけで十分だよ。加子に連絡しとく!」


下山田はラインを開き、友人の杉本にメッセージを送っている。


「有暮のどこに行きたいんだ?」


「えっと、、、ちょっと待ってね。」


店の名前を調べているのかスマホをスクロールしながら探している。


「あ!そうそう。有暮ガーデンに行きたいんだ!」


「ああ、あの新しくできたショッピングモールみたいなところか。」


「うん。あ、ほら駅着いたよ。」


電車を降り改札を出て下山田に続き真っ直ぐ歩いて行くと、有暮ガーデンとローマ字ででかでかと書かれた看板が見えてきた。


「こっちだね!」


「お〜ここか。」


看板を過ぎると広々とした空間に、横にも縦にもでかい建物があるのが見える。

そこにはショピングモール以外にも、シアターやホテル、温泉などいろんな施設があることが書かれていた。


「すげえな。さすが新しいだけある。気合入ってんな〜。」


「ほら、あっちにいろんなお店がある!行ってみよう!」


下山田は軽い足取りでショッピングモールの入り口へと向かっている。


「ほら早く!」


「うおあ!そんな急がなくても。」


ノロノロと後ろを歩いているとまた手を掴まれ引っ張られながらショッピングモールの中へと入った。



* * *



「ただいま〜」


リビングのソファーで携帯を見ながら寛いでいると友達とデザフェスに行っていた弟、圭介が帰ってきた。


「おかえり〜」


「なんだ姉ちゃんいたのか。」


「今日はずっと家にいました〜〜。何それ見せて見せて。」


弟が持っている紙袋を奪い中身を見てみるといろんな写真が載っている雑誌やら本がたくさん入っていた。


「うわ〜〜!いっぱい入ってる。どれどれ。」


「あ!もー勝手に開けるなよー。」


「はいはい。あ、そういえば今日お母さんたち仕事で遅くなるんだってー。夕飯どっかで食べる?」


「あー、いいね。何にすっかなあ。」


「ねえねえ、慎くんも誘わない?」


「慎ならまだ帰ってきてないぞ。」


「えー?一緒に帰ってきたんじゃないの?」


「帰る電車先に乗っちゃってさ。下山田と慎だけ乗れなくて。そしたら下山田の付き添いでどっか行くみたいな連絡きて先帰ってて良いって言われたから帰ってきた。」


「あ、そうなんだ。」


もしかしたら一緒に夕食を食べられると思っていたので少し残念だった。


「なんだよ姉ちゃん、そんな残念だったのか。」


「え、顔に出てた?」


「うん。まあ姉ちゃんが夕食一緒に食べたいって連絡したらすぐ帰ってくんじゃね?」


「え、いや、良いよ。今日じゃなくても良いし。」


「そういう遠慮、しない方が慎は喜ぶと思うけどな。」


そんなことを言いながら弟は洗面台の方へと去っていった。


「、、、無理強いしたくないだけだよ。」


家は近いし時間がそんなに合わないわけでもない。

別に今日じゃなくても良い。


近所の新しく出来たレストランのサイトを携帯で見ようとしていたが、今日はやめておくことにする。

そのサイトをお気に入りに登録して携帯を閉じた。


ソファーに再び寝転がり弟が買ってきた雑誌を開く。


そこにはとても綺麗な景色の写真がたくさん載っていた。


「綺麗、、。」


その写真たちはとても綺麗で素敵なのに、なぜか心は弾まなかった。

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