第40話 ターコイズのようにはなれない
大和くんの好みのアクセサリーはこれなんだ。
そんなことを考えながらゴールドの花飾りとターコイズの石がついたブレスレットを見つめていた。
私はなんであんなことを聞いたのだろう。
そしてなんで私は今それを見つめているのだろう。
そのブレスレットはキラキラととても輝いて見える。
それはただ見た目が綺麗だからなのか、
それとも、
「、、、ねえ。」
「ん?」
「このブレスレットさ、私が買っても良いかな?」
私は隣に座っている友達にそんなことを聞いていた。
「え!いいよ!お安くしときますね。」
「いやいや、定価でお願いします。」
「じゃあ、はいどうぞ。」
「うん。ありがとう。」
私は友達からブレスレットを受け取り、その分のお金を渡す。
受け取ったブレスレットを改めてじっくり見てみる。
「、、、やっぱり綺麗だね、これ。」
「そう?ありがとうはるちゃん!」
私は何をしているのだろうか。
多分大和くんの気持ち悪さが少しうつってしまったんだ。
そう考えないとやってられない。
、、、なんで私がこんな気持ちにならないといけないのよ。
手伝うために二人っきりになっただけなのに、あの時の私の気持ちは気まずさと恥ずかしさでいっぱいだった。
私だけがこんな気持ちをして馬鹿みたいと思っていたのに、あなたは私のことをチラチラと見ながら少しだけ気まずそうにしていたのが分かった。
それが嬉しかった。
好きとかではないけれど私を意識しているのが見て分かって、そんなことだけで良い気分になってしまったのだ。
でもやっぱりあなたの考えていることは、
お姉さんのことだった。
『陽心にって思うと何を選んでいいか分からない。』
は、何?好きすぎで悩んじゃうとか言いたいわけ?うざいんだけど。
アルバイトだってそう。
お姉さんに格好良いところを見せるためとかほんと気持ち悪い。
お姉さんのことを考えながらバイトなんかして、それで、手際も良くなって、、、。
そう思いながら今自分が持っているブレスレットに触れて苛立ちを募らせる。
本当にむかつくのに、早くこんな気持ち消し去りたいのに、あなたの選んだこのブレスレットに惹かれてこうやって手に取ってしまっている。
本当に愚かで情けない。
女の子は切り替えが早いなんてよく聞くけど、本当にそうなら早くしてよ。
あなたの意識して気まずそうな横顔も動揺しているその姿も、ありがとうと優しく微笑むその顔も、
まだ私には、輝いて見えてしまっていた。
* * *
少しの間いろんなエリアを一人ぶらぶら周って見ていると途中で圭介や杉本と会い、そのあとで手伝いが終わった下山田と合流した。
全員一通り見終わったので帰ろうということになり、近くのスレトランで食事をして、今はラージサイト駅内で乗ろうとしている電車のホームに向かっている。
隣にいる圭介の方を見るとお目当てのものが買えたのかすごく嬉しそうにしている。
「圭介、いろいろ買えてよかったな。」
「おう!よかったよかった。慎も気に入ったの買えたんだな。」
「ああ。ちゃんと買えたよ。」
「あ、電車来てる。」
そう圭介に言われ到着している電車の方に行き、4人で電車に乗り込み空いている席に座る。
「、、、あれ?この電車逆方面じゃない?」
杉本が携帯の乗り換え案内アプリを見ながらそう呟いたので、電車の電子掲示板を見てみると確かに俺たちは帰る方向とは逆方向の電車に乗っていることが分かった。
「まじか!杉本ナイス!あっちの電車もちょうど来てんじゃん。行こ行こ!」
そう言って圭介と杉本は反対側の電車に向かおうと今乗っている電車を降りた。
2人に続き俺と下山田も電車を降りる。
そして反対側の電車のドアが閉まる合図の音楽が流れ出した。
「あ、乗れそう!」
前にいた圭介と杉本が走り出したのでそれに俺と下山田も続いて走る。
音楽が鳴り終わる直前に最初に走った圭介と杉本はその電車に乗り込めた。
俺と下山田も乗り込もうと走るが音楽はもう止まっている。
ドアが閉まりますとアナウンスが鳴る前に乗り込めるかと思い急ごうとすると、後ろから手を掴まれた。
振り向くと下山田が手を掴んでいる。
「どうした?」
「あ、、結構ギリギリでもうすぐ閉まりそうだから危ないと思って!」
立ち止まった途端ドアが閉まるアナウンスが流れ始める。
「それもそうか。」
するとアナウンスが鳴り終わり、ゆっくりとドアは閉まった。
俺たちが乗れなかったことに気づいた圭介たちは申し訳ないと言いたげな顔でドアにくっ付いて俺たちにジェスチャーを送ってきた。
俺はまた後でみたいなジェスチャーを送り返し、下山田と一緒に手を振って圭介たちを見送った。
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