第23話 お互いのタイミング


「タイミングが悪いというかなんというか」


圭介が美術室の窓から、外の学校裏の花壇を見てそう呟いている。


「、、、。」


今この窓からはちょうど園芸部が外の花壇で作業しているのが見える。


園芸部は放課後いつもだったら美術室の一室で活動するのだが、今日は夏休み前最後の登校日ということで花壇での花の手入れの作業らしくいつもの部屋には園芸部は来ていない。


本当にどうしてこのタイミングなんだと俺も言いたくなる。

今日は絶対にちゃんと陽心と向き合おうと思って意気込んで来たのに。


「姉ちゃんたちはもうここには戻ってこないみたいだし、俺たちも今日はもう終わりだしな。」


美術部も今日は夏休みの活動と課題のことを聞いて今さっき解散になった。


「校門前で待ってるって連絡入れるか。」


「んー、、、待ち伏せか、、。」


「おい、圭介。俺がストーカーみたいな言い方やめろよ。」


違うの?みたいな顔でこっちを見るな。


「もう日曜に直接話たら?どうせ会うんだろ?」


「、、、陽心が会ってくれるならだけど。」


「大丈夫だって!それは絶対に問題ない!俺が弟として保証する!それにその方が時間だってあるしじっくり話せるじゃん。」


「、、、それはそうだけど、、」


「二人で何眺めてんの〜?」


「下山田。」


後ろから下山田が声をかけてきて俺たちと同じように窓の淵に肘をついて外を眺める。


「あ〜お姉さんか。おーい!おね


「お、おい!待て!」


俺は下山田の腕を掴んで今しようとしていたことを必死に止める。


「え、何?そんなに恥ずかしいの?」


下山田はニヤニヤとからかうように俺を見てくる。


普通に恥ずかしいだけなら、下山田が陽心に声をかけるのを俺は少しだけ止めるがその制止は全く意味もなく下山田の声は陽心に届き、気づいた陽心がこちらを見上げて手を振って俺も手を振り返すという流れをやりたかったのだが今はそうもいかない。


「、、、違うんだ。その、一回ちゃんと話さないといけなくて


「喧嘩したの?」


「あ、いや、喧嘩というか俺の一方的な攻撃によるものというか、、。」


「ふーん、そうなんだ分かったよ。、、、おーーい!お姉


「おい!ばか!」


今何が起こったのか把握できなかったが俺はまた下山田の腕を引っ張り今度は窓の下にしゃがみ下山田もしゃがませた。


「あの、下山田さん、、、俺の話聞いてましたか?」


「聞いてたよちゃんと!お姉さんと早く仲直りしたいからここから呼んでくれって言ってたんだよね。」


「違うわ!」


「え!違うの!?てっきり私がお姉さんに声をかけるのを大和くんは少しだけ止めるんだけどその制止は全然意味なくて私の声はお姉さんに届いちゃって、気づいたお姉さんがこっちを見上げて手を振って大和くんも手を振って仲直りしたいっていう振りかと思ったよ。」


「、、、。」


ちょっとなんか違わないけど、違う。


「今回はちょっと簡単に流したくなくて、ちゃんと話して解決したいと思ってるんだ。」


「そうなんだ。」


「だからさっき慎に日曜のデートでちゃんと謝ればって言ってたとこなんだよ。時間あるし。」


「圭介、後ろから余計なことを言うなよ。日曜に陽心とイチャラブおデートなんて、、、普通に出かけるだけだ。」


「いや、イチャラブおデートとは言ってないけど。」


「え!日曜お姉さんとデートするんだ!大和くん、少し前進したねえ。」


「まあ、、前進できてれば良いんだけどな、、。」


昨日のことで後進してないことを願うしかない。


「じゃあ、ちゃんとオシャレして行かないとね。ん〜そうだなぁ。あ!今から駅前のショッピングモールで日曜の服見に行かない?ねえ万里くん。」


「良いかもな!俺姉ちゃんの好み少しは分かるし選んでやるよ。」


「え、いや俺は今日話さないと


「話すこと今まとまってんのかよ。」


「んー、、、、。」


まとまってるかといえばまとまってるとはしっかり言い切ることはできない。

謝ることは決まっているがまだ何をまず話したら良いのか。

昨日圭介に言われたことで自信は持てたが、嫌な気持ちよりも好きをぶつけるといのがまだなんとなくしか分からなくて答えが出せていない。


「じゃあお前もちゃんと考えて日曜しっかり話せよ!」


圭介は俺の背中を叩いて歯にかんで見せた。


「、、、お前も、って、、。」


「ちゃんと話したいってお前だけが思ってるわけないだろ?」


「!、、、ああ、分かったよ。」


そうだ。陽心だって考えてるんだ。どう俺と話すか。


「、、、よしじゃあ、めちゃくちゃ格好良く仕上げてくれ。」


「おっけい!じゃあ行きますか!」



* * *



「おーーい!お姉


「、、、?」


「万里先輩どうしたんですか?」


「あ、なんでもない。なんか聞こえた気がして。」


後ろの上の方から何か聞こえた気がして振り向いたが呼んでいそうな人は誰もいなかった。

もしかしたらと窓が空いている美術部を見たが誰もいなかった。


今日は部室には行かず、花壇に集合解散になっている。

慎くんと話したかったが今日はタイミングが合わないみたいだ。

どこかで会おうという連絡もできたのだが、美術部は今日すぐ解散みたいだから待たせるのもあれだし、それに、まだ慎くんになんて言って良いのか分からない。


もし、私が変なことを言ってしまってまた慎くんが逃げてしまったら元も子もない。


日曜、慎くんが出かけるという気持ちが変わらなかったらその時の方がじっくり話すことができるからその方がいいのかもしれない。


日曜のこと、今日連絡してみよう。


その間もう少しだけ言いたいこと考えてまとめておこう。

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