第19話 身近な相談役
「はーーーーーーーー。」
陽心にあんな態度をとりたかったわけじゃないのに、ついてきてしまったことも普通に謝りたかったのに、苛立って苦しくてそれどころではなくなっていた。
俺がバスを降りたとき陽心、心配そうな顔で見てたな。
「はーーーーーーーー。」
「、、、ちょっと、さっきからため息でかいんだけど。」
リビングのソファーに座ってテレビを見ながら今日の帰りの出来事を思い返していると無意識にため息がこぼれていたらしく、後ろのダイニングの椅子に座っていた姉が嫌そうに言ってきた。
「ああ、うん。、、俺が悪いんだ、、。はーーーーー。」
「いやなんのことだか全くわかんないわ。」
「、、、、はーーーー。」
「、、、なんかよく分かんないけど悩んでんなら話してみなさいよ!」
姉は基本、弟の俺には優しくはないけれど、弱っているときには昔からよく話を聞いてくれていた。
こんなことを話すか迷うけれど、どうせ姉には俺が陽心を好きなことがバレているしこのモヤモヤした気持ちが少しでも軽くなるならまあ話してもいいかとも思う。
親には聞かれたくない話だが父親はまだ仕事だし、母親は風呂に入っている。
今が相談するにはちょうどいい環境だ。
「、、、きもいとか言うなよ。」
「大丈夫。言わない言わない。」
俺は姉の向かいの椅子に座り、今日のことを軽く話した。
* * *
「うっわ、なにそれ、きっも!え、あんたただのストーカーじゃん!きんも!」
「ゔっ!!」
これだから姉は嫌なんだ...!
心を許して相談したのにやっぱりこれだよ。一番言われたくないことをこうもダイレクトに言ってぐさぐさと心をえぐる。
「やばいよあんた、気になったからついていくとか、、。犯罪だけは起こさないでよね。」
「起こさねえわ!分かってるよ俺だって、、やばいことくらい、、、。」
「、、、それでついて行った結果、陽ちゃんとその同級生がイチャイチャしてるのを見て、いてもたってもいられなくて追いかけたら一緒にファミレスに入ることになってそれでもっとイチャイチャを目の当たりにして落ち込んでるという感じかあ。」
「イチャイチャはしてねえわ。」
「あんたさあ、ほんとまだまだガキだよねえ。」
「、、、。」
姉の言い方はムカつくが本当のことを言われて返す言葉もない。
「てかまだ陽ちゃんのこと好きだったんだ。」
「まあ、、、そうだけど。」
「中学の時くらいに、あたしが茶化したら『もう俺は陽心のことなんて好きじゃない』とかなんとか言ってたのに、ああそう、なんだそうなんだ〜〜。」
ニヤニヤと気持ち悪い顔で姉が俺の顔を見てくる。
「いいだろもう、そんなことは。」
「まあその同級生と陽ちゃんの関係は本当のところどうなのかわかんないけど、ついて行ったことに関しては別に気にしなくていんじゃない?陽ちゃん気づいてないんでしょ?」
「まあそうだけど、なんか謝らないのも嫌だし。やっぱ付いていかれるのってきもいじゃん。」
「うん。気持ち悪い。」
「、、、はーーー、だよな。ついてきてたなんて言ったら、嫌われるかな、、、。」
「あたしは嫌だけど、陽ちゃんはそんなことで嫌いになったりしないでしょ。」
「、、、。」
「あんたがそれよく分かってるじゃん。」
そうだけど、それは本当にそうとは限らないことだってある。
予想以上に陽心がそういうの嫌だったら気持ち悪いとか思うだろうし、でも陽心だったらそんなことではなんても思う。
でもやっぱり不安ではあって、嫌われたくないという気持ちもあるし。
「うん、、、。」
「同級生の子だって陽ちゃんと付き合ってるってわけじゃないんでしょ?」
「それは、、絶対ねえよ。」
「じゃあ別に気にしなくたっていいじゃない。」
「まあ、、、うん。」
付き合ってはない。俺の告白を考えたいと言ってくれたんだからそれは絶対にない。
でも陽心があいつをどう思ってるのかは分からない。
あの関係は友達だと思う、でもそうじゃなかったらと考えると、、、。
「、、、そんなうじうじ頭の中で考えてないでもっとこう、ガッと行きなさいよ!ガッと!」
「、、、なんだよガッと行くって。」
「陽ちゃんのこと押し倒すくらいしてみなさいよって言ってんのよ。」
「ばっ...!!ばっかじゃねえの!お、おし、押し倒すなんて出来るわけねえだろ!」
「は〜〜そんなことで動揺してるなんて、ほんとまだまだよねぇ。女はね、それくらい強引にこられた方がころっと行くのよ!」
「は、はあ?!いきなりそんなことしたら陽心がびっくりするだろ!」
「驚いたところでそこを突いていくのよ。「陽心は俺のものだ。」とか「俺のことしか考えられなくしてやる。」とか耳元で囁けば、目を潤ませて「もう慎くんなしじゃいられない!私を慎くんだけの女にして。」とか言ってくるから!淡い恋心が大人の恋に発展してもう止められなくなる。これで完璧!」
まじでこの人中身おっさんだな。
今気づいたけどちょっと飲んでんのか、この酔っ払い。
「ああ、もういいよ。そんなこと、、、まずできねえし、そういうのはやっぱ、付き合ってからがいいというか、、、。」
「まあ、そんなことできるわけないよねえ、慎には。陽ちゃん大好きすぎて恥ずかしいもんねぇ〜。」
「〜〜〜うるせえなぁ。酔っ払いは早く寝ろ。」
「絶対、諦めんじゃないわよ。」
ニヤついていた顔がすっと真剣になり俺を見据える。
前から姉は俺のこの気持ちを姉なりに応援してくれている。
「そんなの、、、当たり前だろ。」
「絶対、陽ちゃんを私の妹にしなさいよ。」
「き、気が早えよ!!」
まあ、応援してくれているのは弟の幸せより自分の幸せのためかもしれないけれど。
「あの可愛い陽ちゃんが妹になったら、もうそれだけで毎日が輝いて労働という檻の中の平日でも天国になりそう。」
昔から姉は陽心のことを気に入っていたからこの気持ち悪い発言ももう慣れたが、久々に聞くとやっぱり気持ち悪い。
「まあ、話聞いてくれてありがとな。」
「何言ってんの。でかいため息聞き続けるのが嫌だっただけよ。」
どんな理由でも話を聞いてくれたからさっきよりは心が軽くなった。
うじうじ悩んでいる俺にぶっ飛んだことを言って背中を押してくれるのは本当にいつもありがたいと思う。
二階の自分の部屋に行き、ベットに横たわりさっき言われたことをぼーっと考えてみる。
『目を潤ませて「もう慎くんなしじゃいられない!私を慎くんだけの女にして。」とか言ってくるから!淡い恋心が大人の恋に発展してもう止められなくなる。』か、、、。
陽心がそんなことを言ってきたら俺のことだから、もうその時点で理性は崩壊しているだろう。
実際には絶対に、お、押し倒すなんてことはしないけど、ま、まあ妄想だけなら、大丈夫だろう。うん。
『絶対、陽ちゃんを私の妹にしなさいよ。』
そりゃあ俺だっていつか、そ、そういう風になれたらいいなって思うけど、今はまだそんな関係にすらなってないし、いやでも、もしそんなことになったら
ドン!
「痛ってええ。」
未来のことについて浮かれながらいろいろ考えてゴロゴロしていると勢い余ってベッドから落ちてしまった。
あーーー何を考えてるんだ、俺は。もうはやく寝たほうがいい。
ちゃんと明日付いてきてしまったことを謝って、あの人との関係もゴチャゴチャ考えずに陽心と話そう。
陽心とはいつも通り、楽しく一緒にいたいから。
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