第14話 解釈を変えればいい

* * *


「お待たせ!えっともう帰れる?」(11話)


「もう帰れる。帰ろう!」


万里さんの用事ってあの人と帰ることだったのか。


あの人、、、お昼に万里さんと話してた人だ。


昨日はそこまで仲良さそうにしていなかったのに、今日はなんだか仲良さそうに話している。


「じゃ、帰るか。」


「うん。行こっか。」


あの人、すごく嬉しそうな顔して万里さんを見ている。


万里さんは、、、まあいつも通りって感じだけど。


、、、、、、


* * *



「万里さん。」


「ん?、、、え!水野くん?」


教室ではあまり接することがない彼女の席へと向かい声をかけると、彼女は目を大きく開いて驚いている。


「なんですか?そんな驚いた顔して。」


「いや、だって教室ではあんまり喋りかけてくれない人が、急に私の席に来て喋りかけてきたから。」


「、、、たまには声をかけることもあるじゃないですか。」


「まあ確かに、ごくたまに話かけてくることはあるけど、私の席まで来てってのが今までなかったような気がするから。レアだね。」


「、、、、、そういうときもありますよ。」


こんなに驚かれるなんて、、、この2年ちょっとの間に俺はそんなにクラスで彼女に話しかけていなかったのか。自分でもその事実に驚いている。


1年の時とかはうるさい人だなと思って自分からは話しかけてはいなかったけど、2年くらいからは少しは、、、話しかけていたような気がするような、、、そうでもないか。


「どうしたの?あ〜、もしかして次の授業の課題見せて欲しいとか?まあ私の英語力に期待するのは嬉しいんだけど、今日の課題は自信ないからなぁ。」


ニヤニヤしながら意味のわからないことを言っている。


「万里さんじゃないのでそんなことを言いにわざわざ来ませんし、万里さんの英語力には全く期待してません。」


「もう。そんなにグサっとくるようなこと言わないでよ〜。確かに逆に私が見せて欲しいけどさ〜。じゃあ、どうしたの?」


また言うかどうか少しの迷いはあったが、こうでもしないと確かめるものも確かめられないし、確かめた後で手遅れになるのも嫌だった。


「、、、今日は部活の後空いてますか?」


「あ〜、うん!今日は空いてるよ?」


「そうですか。じゃあ部活の後ちょっと俺につき合ってくれませんか?」


「うん。大丈夫だよ!」


万里さんなら断らないと思っていたが、もしかしたらという不安があったのは確かで。


普通にいつも通りの笑顔で答えてくれたのがちょっとだけ嬉しかった。



* * *



「あ、そういえば昨日お姉さんといい感じにデート出来た?」


「はあ?!デートじゃねえよ、、、。」


「動揺しちゃってウケる笑笑」


「うるせーな。」


いつものように下山田が放課後の部活終わりに陽心いじりをしてきた。


今この場に圭介がいたらこのいじりをどうにかしてほしいところだが、圭介は昨日の補修?を今日に回したみたいでその担当の先生のところに行っている。


「その反応はいい感じだったんだ〜。存分にイチャイチャできたのかな。」


「い、いちゃいちゃなんてするわけないだろ。まだただの馴染みなんだから。」


「ふーん。まだねぇ。」


昨日は陽心と帰って夏休みの約束をして、一緒にアイスを食べて、


進路の話も聞けたし、前だったら普通に話せないことも普通に話せて、とても良い時間だった。


こんなことを毎日できれば良いのにと正直なところ思うが、陽心にだって予定があるだろうし、毎日ただの幼なじみが一緒に帰ろうと言いに来るのも鬱陶しいだろう、、。


まあでもたまには、誘うけど。


「今日も一緒に帰るの?」


「、、、今日は約束してないから、、。」


「そうなんだ。、、あ、お姉さんだ。」


そんな話をしているとちょうどその本人が隣の部屋から出てきた。


その姿を見ていると陽心が俺に気づいて笑顔で手を振ってくる。


ぎこちなくだが俺も手を振り返した。


「あら〜手なんか振り合っちゃって。」


「う、うるせえ。」


陽心が部屋から出た後に見覚えのある男子生徒が出てきた。


その生徒は昨日の昼に陽心に水野くんと呼ばれていた人だった。


その人と陽心は当たり前のように二人で一緒に美術室を出て行った。


「あれ?お姉さん今日はあの人と一緒に帰るのかな?」


「、、、。」


おかしいことではない。部活が一緒のやつと帰るのは何の問題もないし何かやましいことをしているわけでもない。


それに俺がそれをダメなことだと決める権利もない。そういう関係でもないんだから。


だけど


「大和くん、めっちゃ顔に出てるよ。」


「は?何がだよ。」


「そんなに気になるならさ。」


「!」


「付いて行っちゃおうか。」


下山田は俺の真正面に来て顔を覗き込んでとんでもないことを言ってきた。


「何言ってんだよ。付いていくわけないだろ。」


下山田から顔をそらすがそれに合わせてまた顔を覗き込んできた。


「え?なんで?いいじゃん。気になるんでしょ?」


「ゔっ、、、」


いちいち人の顔を見て考えていることを読み取らないでほしい。


「そりゃあ、気になるけど、付いていくのはおかしいだろ。陽心だって嫌だろうし。」


「じゃあ、付いていかなければいいんだよ。」


「え?」


「今日は私の行きたいところに一緒に付き合ってよ。」


「、、、、。」


「それならいいでしょ?」


「、、、、、、、。」


いたずらな笑顔でまたとんでもないことを言い出した。


その言葉の意味は考えなくても分かる。


その提案にあえて乗ろうと思ってしまっている自分が嫌になる。


それでもこのモヤモヤした気持ちをどうにかして晴らしたくて。


「どう?」


「、、、、、、、、、、、、、、、分かった。それなら、まあ、仕方ない。」


今日は下山田の行きたいところに付き合うことにしよう。


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