第9話 普通の日常に


俺は、、俺はずっとお前が好きなんだよ!

自分でもおかしいくらいお前に惚れてて、、、、


今から俺のことそう言う目で見て考えろ。

それから教えてほしい、お前の気持ちを。




恥ずかしいーーー


今思い出しただけでも恥ずかしすぎる。


今日は普通に学校があって陽心とは放課後顔合わせるのに、昨日はもう感情に任せて言いたいことを全部言ってしまっていた。


結果的にはまあよかったんだけど、、


どんな顔して会えばいい。


あんな、、堂々と良く言えたもんだ、、。


でもちゃんと気持ちは言ったし、陽心も考えてくれるって言ってたし、、、そう言う目で俺を見てくれるってことなんだよな。


そう言う目で、陽心が俺を、、、


ちょっと待て、ということは俺の毎日の行動全てが判定基準になるってことだよな。


今日の俺大丈夫だろうか。


寝癖は、、直したし、服は、、制服だし、いつもと一緒だよな。


待て、いつもと一緒でいいのか?


もっといけてる感じに


「お!しーん!おはよ〜」


「あ、おお。圭介か。おはよう。」


駅から学校までの坂を歩いていると後ろから圭介が声をかけてきた。


「なんだよ、慎。そんな険しい顔して。」


「圭介、俺大丈夫かな。今日の格好とか髪型とか。」


「え?いつもと変わらないけど。」


「そうなんだよ。それが良いのか悪いのか分からなくて。」


「何言ってんのか分かんないけど、、いや〜姉ちゃんよりはいつも通りで良いと思うよ。」


「陽心がどうかしたのか?」


「いや姉ちゃん昨日帰ってきたとき目腫れててさ、今日の朝見たら目パンッパンでめっちゃブスだったんだよ〜!笑」


何言ってんだよ。かわいいだろ。


「まあ、昨日すごい泣いてたからな。」


「そうそう、姉ちゃんから聞いたよ〜!ちゃんと話したんだってな!」


「なんだ聞いてたのか。」


「ほんとよかったよ。姉ちゃんも慎もずっと悩んでるんだもん。昔姉ちゃんなんてさ、あんなこと言っちゃったよ〜、とか言っててさ〜」


「お前陽心が言わなかった本当の理由知ってたのか?!」


「まあ、うん。」


「なんで俺に言ってくれなかったんだよ!」


「いやだってさ、姉ちゃんがすごい形相で絶対言うなっていうし、俺から言ったところで姉ちゃんがうまく誤魔化すだろうからさ。やっぱり2人でしっかり解決した方が良いと思って言わなかったんだよ。」


「、、、まあたしかに。それはそうだな。」


「でもよかったよかった!2人が元に戻って!で、なんで今日の格好気にしてんだよ。」


「それは、、、俺がまた告白して今度はそう言う目で見て考えてくれって言ったから、ちょっとは良い格好した方がいいのかなと思って。」


それを聞くと圭介は吹き出して俺の背中をバンバン叩いてきた。


「いって」


「そんなのいつも通りでいいだろ笑笑 考え過ぎ考え過ぎ!お!噂をすれば姉ちゃんじゃん!」


いろいろ喋っているといつの間にか学校の校門まで来ていて、その奥の花壇の花に陽心が水をやっている。


園芸部は、季節ごとに回数が変わるが夏は朝と昼、放課後の3回に分けて花壇に水やりをしている。


今日は陽心がその担当なんだろう。


「!、、、陽心」


「姉ちゃん朝ぶり〜!」


「あ、圭介、、と慎くん。」


圭介が呼ぶと陽心は圭介と俺に気づいた。


「お、おはよう。」


昨日の今日でなんとなく気まずくてぎこちない挨拶になってしまった。


「おはよ!慎くん。」


そんな俺とは裏腹に陽心は昔みたいな笑顔で挨拶をしてくれた。

もうそれだけでとんでもなく嬉しくなっている自分がいる。


「あ、うん、おはよう。」


「姉ちゃんやっぱまじ、、笑笑 ブス、い゛って!!」


俺は陽心の顔を見るなりケラケラ笑っている圭介の後頭部を鞄で勢いよく狙った。


「し、慎くんすごい勢い良かったね笑」


「おい!慎!めっちゃ痛かったんですけど!」


「うるさいな。ほら早く行くぞ。じゃあ陽心、また放課後。」


「うん!またね。」


陽心は軽く手を振ってまた花壇の方に戻って行った。


ああ、


なんて幸せな朝なんだ。


陽心に手を振ってもらえる朝なんて何年ぶりだろう。


少し目が腫れているのは俺のために流してくれた涙のせいなんだと思うだけで


「も〜あんなの冗談なのに本気で叩くなよなあー、、うわ、きもっちわるい顔してんなあ慎。」


「うるせーぞ。」


「あ、すみません。」


とにかくいつも通り、いやいつもよりももっと良い朝が迎えられて最高の一日になりそうだ。



* * *



よかった。普通に話せて。


なんかこの感じ久しぶりだからぎこちなくなっちゃうんじゃないかと思ったけど意外と大丈夫だった。


まあ、それはいいんだけど、、


「万里さん、西門の方の水やり終わりました。」


「あ!水野くん、ありがとー!こっちも今終わったとこ。」


声をかけてきたのは同じクラスで同じ園芸部の水野 純(みずの じゅん)くんだ。


「じゃあ戻りましょうか。」


「そうだね。ねえ水野くん、、、私の目やっぱりすごい腫れてるかな?」


さっきあのくそ野郎に言われてまたこのことが気になってきてしまった。


やっぱりそんなに腫れているだろうか。


「まあ、ちょっと腫れてるくらいですけど、そこまでではないです。」


「そうだよね。なんだ、よかった〜!」


「、、、昨日、、なんか泣ける映画でも見たんですか?」


「え?」


「いや、あの、、、目腫れるくらい泣ける映画とか見たのかなと思って。」


多分水野くんなりに気を遣って、泣いた理由を聞かないでこういう言い方をしてくれているんだろう。


「あ、そうだね。うん。悲しいとかじゃなくて感動系のだったからすごく心が洗われたって感じがしたよ。良い涙を流したって感じ?」


映画の話ではないけれど。


「そうですか、それならよかったです。、、俺も感動する動画とか映画とか見て泣くときあるので腫れるのよく分かります。」


「え!水野くんそんな泣くことあるんだ!」


「、、、俺をどんな人間だと思ってるんですか。」


「あ、ごめん。感動するもの見ても、ふーん、そんな感じね。とか言ってそうなイメージだったから。」


「失礼ですね。俺だって心打たれて泣くことだってありますよ。」


水野くんは呆れた顔でため息をついている。


「ごめんごめん!そういえば水野くん、まだ敬語で話すよね。もうクラスも部活もずっと一緒なのに。」


「これに慣れてしまって、なかなか取れないですね。それにまだ距離があるというか。」


「え!うそ!まだ距離感じてたの?!え〜縮まってると思ってたの私だけか〜。」


クラスではあんまり話さないけど部活では意外と話す方だから結構距離は縮まってるのかと思っていたが本人はそれほどでもなかったらしい。なんかかなしいなあ。


「、、、その時だと思ったら敬語外しますよ。」


「そっか〜〜。」


水野くんの中では今はその時ではないらしい。

敬語が外れるときが来るのか分からないが、もし来たら結構嬉しいだろうなと思う。


「じゃあ、行きますか。」


「はーい。」


使っていたホースを回収して学校の倉庫の中に置き、お互い同じクラスなので同じ道を2人で歩いていく。


「、、、万里さん、今日の部活の後って何か用事とかってありますか?」


「あー今日はちょっとあるかなあ。」


「そうですか。」


「どうしたの?なんかあるの?」


「あ、いえ。大したことじゃないので、気にしないでください。」


「気になるなあ、なに?なに?」


「ちょっとしつこいです。大丈夫なんで。」


「え〜なんだよ〜。」


何かあるのだろうか。


少し気になるけどあんまり聞くと嫌がられそうだからやめておこう。


こういう素っ気ない態度も敬語が取れれば何か変わってくるのだろうか。


まあ、こういうのも水野くんらしいといえばらしいけど。



今日は用事がある、というかしたいことがある。


どうなるか分からないけど、


今日は一緒に帰れたらいいな。

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