第六話 筋・肉・巨・砲!!!
「では、お手合わせ願おうか!」
「さっさとはじめよーぜ。こっちは朝飯もまだなんだからよ!」
屋敷奥の稽古場。両手で木刀を構えながら華がニヤリと笑う。
「フッ…なら!遠慮無く行かせて貰おう!筋・肉・巨・砲!」
ハァァアという声を漏らすと共に正一の全身の筋肉が膨張してゆく。
「八ッ!」
大きな掛け声と共に正一は前かがみの状態で強大になった上腕二頭筋を肩の位置まで上げ、そのまま強大な大砲から放たれた砲弾のように華目掛けて突っ込んだ。
強い殺気と熱を瞬時に感じ取った華は、体全体を斜め後ろに追いやり直撃する寸のところでそれを躱した。
「どうやら、かすったようだな。」
右腕の浅い切り傷口から垂れた少量の血が華の肌上を滑る。
「まだまだいくぞ!」
気合を入れ直した正一は同じ姿勢で華目掛け突っ込む。華はまた寸のとろでそれを避ける。
それを見逃さなかった正一はそのまま避けた華の方に身体を捻じりそのまま突っ込んだ。
しかし、華は正一の動きを読んでいたかの如く流れるように体を逆に捻り、その一打すらもヒラリと躱した。
完全に躱しただと…!
正一が驚愕の念に浸った瞬間、後ろからの殺気に気づき咄嗟に体を横に勢い良く捻じ曲げた。
「よく今の反応したじゃん。デカい割にはさ!ってぇ、何だこの臭い!」
酸っぱい激臭が華の鼻をつんざく。
「ってあれ、なんだか目がかすむような…白い靄みてぇーのが…」
いつの間にか稽古場には白い靄のようなものが充満し、それが華の視界を奪っていた。
「フハハハハ!それは俺の漢汗だ!!!」
「お、おとこあせぇ!?」
「そうだ!俺の汗が俺の熱気により蒸発!そして蒸気となった汗は霧のようになり、貴様の視覚と嗅覚を奪う!」
白い靄の中、正一の眼光が鋭く光る
「が、がぁぁああ!くっせぇえええええ!何だぁぁぁ!その取って付けたような技みてぇのはぁぁあああ!」
華が自身の鼻を摘まむ。
「技では無い!俺の体質だぁぁああああ!」
拳を握りしめて言い放った。
「誇らしげに言うな!」
「さぁ!これが躱せるかな!」
白い靄で覆われた稽古場を正一が同じ技で駆け巡る。しかし、華には全く当たらなかった。
「お前も視えてねぇーじゃねぇかよ!」
「そうだ!だからこそ!漢気!連打!連打!れんだぁぁああ!」
正一が稽古場全体を筋肉巨砲を使ってひたすらに高速で移動する。
「フハハハハ!さぁ!貴様にこれが敗れるかな!」
「当ったり前だろうがぁぁあああああ!」
華は白い靄の中から繰り出される猛攻を全て避けきり、一瞬の不意を突いて正一の脳天に強烈な一撃を叩き込んだ。
そのまま正一は前のめりになってその場に倒れ込む。
「かはっ!なぜ…!」
「一回見りゃサルでも分かるっつーの、単調なんだよ、靄が出てきてからの攻撃のパターンがさ。何で同じ軌道を延々と繰り返し行ったり来たりなんだよ。」
鼻を摘まみながら華が話す。
「まぁ、そりゃあ最初の一回はビックリしたけどな。でもそれだけだぜ。さぁ!もう腹減ったし行っていーか?」
「まだだ…まだ貴様の本気を俺は見ていないぞ!!侍よ!刀を抜け!見せてみろ!貴様の能力!俊足の抜刀術を!」
クワッと正一の瞳孔が開く。
「あん?素人相手に使う程のもんじゃねーよ。お前、死にたいのか?」
華がギロリと正一を睨んだ。
「この俺を舐めるなぁああ!はぁああああ!」
「なんだぁ?」
姿勢を起こした正一の右手に光る玉のようなものが浮かび上がる。
「くらえぇえええ!漢・気・漢・魂!」
正一が右の手の平を華の方に向け光る玉を放った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます