第七話 異・刀・抜・刀!
正一の手から激しく光る閃光が放たれ、稽古場に開いた穴から吹きさす強風が白煙を舞いあげる。
その隙、正一が消えた華を探し制帽の庇の下から眼光を揺らしてる間
ハラリと桜色の浴衣と共に白色の下着が空を舞う
「目の前にすると結構良い男じゃん」
鋭く大きく瞳孔を開き、歯茎が見えるくらいにニヤリと笑う華が全裸で一間程の間も無く正一の眼前を覆う。
「神・速・桜・一閃んんんんぉぉぉおおおおお!!」
正一との間合いを閃光の如き速さで詰め、正一の股下からその空間を抉るような一閃が放たれた。
激痛が正一の全身を稲妻のように駆け巡る。
「いったいなにがぁぁああああ!」
空に飛ばされた正一が悲鳴にも近い声を上げる。
「着地の隙もねーぞ!アハハハハハ!」
着地の間も無く悪魔のような笑みを顔に浮かべた華が正一ごと木刀で空を薙ぎ払った。
その間、一間程の隙も無し。
「ハァハァ、ダメ、これ以上は…ホントにホントに「抜いちゃう」!」
白煙の中、眼光を正一より光らせた華の影がゆらりと立つ。
「死ぬ覚悟出来てんだろーなぁ…侍の家紋取りに来てんだろ…本気で来いよ…じゃないとホントに死んじまうぞぉぉおおお!アハハハハハ!」
稽古場の外まで吹っ飛ばされた正一を前に華が居合の恰好を見せる
「いくぞ…漢なら漢らしく歯ぁ食いしばって死ね!」
白煙が華を中心に渦巻く
「異・刀・抜・刀…」
「ダメよ、華姉さん。その人本当に死んじゃうわ。」
カツンと刃と刃が競り合うような音が稽古場に鳴り響き、眩い閃光が朝の陽ざしより強く稽古場を照らす。
「す…ず…私…」
「ダメよ姉さん。殺しちゃ駄目。」
全裸の鈴が華を冷たい目で見つめる。
「………あーあ、興冷めだ興冷め!終わり終わり!あー腹減った!はぁーあ!てか、その前に風呂だ風呂!めっちゃ汗掻いた!」
華がプイと後ろを向き、全裸で稽古場の出口の方に向かう。
「家紋破りか何かは知らないけど、あなた死んでたわよ」
倒れたまま黙って晴天を見つめる正一に鈴が冷たく言い放ち、その場を去った。
正一はまるで希望を見つけたかのように日を正面に大きく笑みをこぼした。
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