243.パークファクター


 ムーンズ  000 320 110┃7

フライヤーズ 010 004 010┃6


  ムーンズ:涌谷、福原、中居、高橋、ヘルマン—水谷、内山

 フライヤーズ:小嶋、松原、羽田、中田—田浦

(勝)福原2勝2敗 (敗)小嶋3勝4敗 (S)ヘルマン1勝3敗21S

(本)リガード17号ソロ(=2回、涌谷)、赤村19号2ラン(=5回、小嶋)


〈寸評〉

 乱打戦となったこの試合は、ムーンズが逃げ切った。初回、リガードの第17号ソロでフライヤーズが先制するも、4回に小山内、ブランドンの連続タイムリーでムーンズが逆転に成功。6回には涌谷が突如コントロールを乱し3つの四死球と2本のヒットで同点に追いつかれるも、7回に島口のタイムリーで勝ち越し、そのまま逃げ切った。6回途中から登板の福原が今季2勝目。敗れたフライヤーズは投手陣が踏ん張れなかった。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「変化球曲がりすぎてマウンドでびっくりしてたろ?」

「え? 何で分かったんですか?」


 試合後、ロッカールームに引き上げようとベンチで荷物をまとめていると、隣で防具を外していた内山に声を掛けられた。


「何でって……、投げ終わってからずっとボール握って変化球の握り確認してるみたいだったからさ。自分の中で何か違和感があったんだろうなって」

「でもそれだけで……」

「まあ、こんなに風吹いてる時のこの球場だったらそういうことだろうな、って思ったんだよ。この球場、バックネットとかに当たった風のせいで変化球がよく変化するって言うし。そのせいでパークファクター的には投手有利の球場なはずなのにここを嫌がるヤツも居るらしいからな」

「へー……」


 ネイチャーズ時代から感じることではあるが、この内山という選手は事前の情報収集に余念が無い。自チームの投手陣や相手打線のことはもちろん、球場の特性なんかも頭に入れているらしい。


「確かにここ、ファールグラウンド広いですからね」

「あ、野手としては嫌な球場だよなぁ。守り辛さもあるし」


 球場にもそれぞれ特性があって、ホームランが出やすいだとかファールグラウンドが広い等といった理由で投手有利の球場、打者有利の球場というのがある。この球場ごとの特性ををデータとして表したものがパークファクターと呼ばれるもので、ファールグラウンドが広い球場や外野フェンスが高い球場、外野フェンスまでの距離が遠い球場は投手に有利な数字が出やすい。ちなみにこの数字は「その年の全球場のデータの平均を1として、それとどれくらい差があるのか」で表すもので、たとえば得点なら(その球場での両チームの得点数÷その球場で行われた試合数)÷(その球場以外での両チームの得点数÷その球場以外で行われた試合数)という式で算出される。


「ま、結局パークファクターなんて単なるデータでしかないからな。年によっても変動するもんだし、参考程度にしかならねぇけどな。他球場の改修とかにも多少は左右されるし」


「内山さんって、もしかして全球団の本拠地のデータとか、頭に入ってるんですか?」

「いや、さすがにそこまでは……。さっきも言ったけど、参考程度にしかならんからな、パークファクターって。もっと重視するデータもあるし、ホントに『頭の片隅に』って程度だからな」


 そう言いながら内山がパラパラとめくったノートには、何かの数字がびっしりと書き込まれていた。

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