163.開幕戦①
100人を超えるパフォーマー達によるパフォーマンス、そして花火まで使った特別PVが流され、球場内のボルテージが一気に上がる。ライトスタンドのフライヤーズファン達によって、『ONE HEART FRIGHYERS』と刻まれた大きな応援幕が広げられ、まるで演劇の舞台の演出の様な光の演出と共に名前を呼ばれたフライヤーズの選手が、それぞれの守備位置に向かってベンチを飛び出していく。
「緊張してんのか? 顔、ずっと強張ったまんまだぞ」
「え? 力入ってます?」
ベンチの一番前で、球場の開幕戦特有の雰囲気を味わっていると、横から青原が話しかけてきた。
「いや、もう後ろから見てて笑っちゃうぐらい全身に力入ってるぞ? 特に表情なんて、誰がどう見てもど緊張、って感じだしな」
「あ……」
言われてみれば、腕にも足にも力が入って、拳も握りしめている。どうやら無意識のうちに緊張していたらしい。
「って言っても、俺も心臓が口から飛び出そうなぐらいなんだけどな。他人のこと言えねぇや」
「え、青原さんみたいなベテランでも緊張するもんなんですか?」
「うん、やっぱり開幕戦って特別だからね。雰囲気が独特ってのもあるんだろうけど、どうしても最初のアウト取るまでは落ち着かないもんだよ、何年やってても」
青原にとっては、これが15年目のシーズン、すなわち15度目の開幕戦。若手の頃から開幕一軍だったかどうかは知らないけれど、それでもこのチームの投手陣では最も開幕戦を経験しているはずである。その青原でさえ緊張するというのだから、やはり開幕戦というのは特別なものなのだろう。
「1回の表、クレシェントムーンズの攻撃は——、1番、センター、高田。背番号、25!」
ムーンズの1番バッターが打席に入り、主審のプレーボールの合図がかかる。今シーズンの開幕戦が、今、始まった。
※ ※ ※ ※ ※ ※
「さあ、全国のプロ野球ファンが待ちに待ったこの日がやって参りました。今年のプロ野球開幕戦、千葉フライヤーズ対東北クレシェントムーンズの一戦をお送り致します。いやー、ようやくこの日が来ましたね。選手にとっても、この日は待ち遠しいものなんでしょうか?」
「そうですね、選手達もここに合わせて調整してくる訳ですから、そう思ってる選手も居るでしょうね。ただ、どうしても最初のヒットを打つまで、もしくは最初のアウトを取るまではオフの期間にやってきたことが上手くいかなかったらどうしよう、という不安はあるものですから、早く落ち着きたい、という思いもあるでしょうね。」
「なるほど、そしてチームとしても一刻も早く今年の初白星が欲しいところですよね?」
「もちろんそうですよね。ここで勝って、スタートダッシュにつなげたいですからね。」
「そうですよね。さあ注目の今季開幕戦、今、プレーボールが掛かりました!」
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