17.チームメイト
「この後時間あるか、高橋?」
帰ろうと、室内練習場の玄関で靴を履き替えていると、声を掛けられた。振り返ると、同じく練習を終えたところだったのであろう、かなりラフな服装の内山が立っていた。
「これから仲村さん、
連れて行かれたのは球場近くにある、割と小さめの、いわゆる『地元の人たちの溜まり場』という様な雰囲気の居酒屋。店に入ると既に仲村と亀山が座っていた座敷に通された。
「お疲れ!」
「お、高橋も一緒だったのか!」
既に軽くアルコールが入っているらしく、2人ともテンションが少し高めである。
まあ座れよ、と仲村に促されて、「いててて」と軽くうめき声を上げながら隣に腰を下ろす。
「そういや高橋って、あんまり話したことなかったよな。入団会見以来かな? 改めてよろしく!」
向かいに座っていた、
内山と亀山は5年程同じチームでプレーしていたし、彼らと仲村は同じリーグでプレーしていて対戦経験もあったから、このチームに入団することが決まってからは、時たま連絡を取り合っていたらしい。
他愛ない話で盛り上がる。野球の話に留まらず、クルマの話、ゲームの話、食べ物の話などなど……。
「なんだ、お前、案外話すの苦手なのかと思ってたよ。人見知りなだけだったか!」
帰り際に、仲村に言われたこの一言が、自分の中では意外だった。
「お前、孤立しないか心配だったんだけど、なんか大丈夫そうだな。1人だけ別メニューでリハビリだし、なかなか絡む機会はないのかもしれないけどさ、もっと周りに自分の存在をアピールしていけよ。俺、お前はもっと寡黙なタイプだと思っていたからさ。」
ポン、と仲村が肩に手を置いてきた。
頷きながら亀山が同調する。
「特に野手陣とは、ほとんど話したことないんじゃねぇか? 一番年下だし、輪の中に入っていくのもなかなかしんどいっちゃしんどいんだろうけど、孤立する方がよっぽど辛いぜ?だって野球はチームスポーツなんだから。守ってる側としても、性格が分からねぇピッチャーの時は守りにくいしな!」
周りにそんな風に思われてたの、知らなかった……。
「え? 俺、そんな風に思われてたんですか?」
「「おう、そう思ってた。」」
仲村と亀山が同調。
「ま、俺はちょいちょいブルペンで話してたからな~。意外とコイツ話すヤツだな、っていうのはなんとなく気付いてたけど。」
内山も否定はしてくれない。
——あれ? 俺ってそんな風に思われてたの? ……そういや、俺って、このチームに入ってからコーチとか社長とかとばっか話してて、チームメートとあんま喋れてなかったかも。
仲村が、ナゼかキメ顔になる。
「こんだけ年も離れた人間と同じチームでプレーしたことなんてないだろうけど、あんまり遠慮しなくて良いんだぞ? というかするなよ、もったいねぇから。遠慮なんて、俺は百害あって一利無しだと思うね。」
「仲村さん、良い感じに出来上がってますね?」
言ってやったぜ、という満足そうな表情を浮かべる仲村に、すかさず亀山がツッコむ。いや、でも言ってる内容自体は良いこと言ってっから、とフォローも。
——いやぁ、俺、別に遠慮してるつもりは無かったんだけどなぁ……。明日からはもう少し頑張って話してみるか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます