13.焦り①
新フォームでのキャッチボールと、あとはひたすらビーチを走り込む日々が続いた。
まだ3月だけど、3月でも沖縄は暑い。晴れていれば当たり前の様に夏日になるし、油断すると真っ赤に日焼けする位に日差しも強いし。そんな中で走り込みの日々はまあ、地獄の様な日々だ。
そんな日々が始まって、1週間程があっという間に経過した。
「あ~、しんどかった!」
練習を終えて、夕飯を食べようとすぐ近くの大衆食堂に入った。お手頃価格で結構なボリュームが食べれて、しかも美味しいということで地元では人気の店だ。店内は『いかにも地元の店』というゆるい空気感がある。
「続いて、スポーツニュースです。まずは新球団、琉球ネイチャーズと大江戸クラフトマンズ二軍の試合をどうぞ。」
店の天井に据えられたテレビは、地元のニュース番組を放送している。
新規参入直後のチームということもあって、地元では琉球ネイチャーズという球団はそれなりに注目されている。沖縄にはプロ球団はキャンプには来るけれどいわゆる『地元球団』が無かった。また、沖縄を拠点とするサッカーやバスケットボール、卓球など色々なスポーツのトップリーグに参加するプロチームが続々と誕生していて、琉球ネイチャーズはその大トリとも言えるタイミングでの結成だった。
「先攻のネイチャーズは3回表、8番の内山がチーム第1号となるレフトスタンドへのホームラン! ネイチャーズが先制します。」
——内山さん、スゲーな。完璧に捉えた一発だ。
「投げては先発、
——仲村さん、流石だな。10年間JPBで投げてきただけあって、打たれちゃ行けないところをしっかり抑えてる。
「しかし6回の裏、この回先頭のドラフト5位ルーキー、中野がこの回から登板の三好の直球を捉え、弾丸ライナーでそのままスタンドへ! 同点とされてしまいます。」
——あれ、中野って確か高卒ルーキーじゃ無かったか? こんなパワーあんの?
「さらにヒットと送りバントで1アウトランナー2塁とされて、1番の
——あ、あれ? 久保って高校の時に県大会で打たれたバッターか? プロに行ったとは聞いてたけど、2軍とは言え1番バッターを任されるまでになってたのか……!
「ネイチャーズはその後もランナーは出すものの、チャンスであと一本が出ません。結局、最後は高卒3年目の速球派、
——俺と同い年とか、年下のヤツらがこんなに活躍してんのに、俺は何やってるんだ……! そうだ、高校とか大学で戦ってたヤツらの中には、もう1軍でプレーしてて、レギュラー獲ってる選手までいるのに……。ヤバい……。
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