一章 「最強呪文。グレートフル・メサイヤ!」
ジリリリッ!
「あぁ……」
俺、
「もう、こんな時間か……」
俺はベットから降り、まだ四月で気温の変化が激しいのに耐えながら台所にむかう。
「ぱぱっと用意しますか……」
昨日買って置いた。食材を取り出し昼ご飯を二人分に用意をしていた。
まあ、コンビニ弁当とか済ませればいいのだが。これには理由がある。
「よし、朝ごはんは今作ったので代用すればいいか……。あとは……」
俺は火を止め、自分の部屋に戻り鞄から鍵を取り出した。
隣の住まいの住人から合鍵を受け取っている。
ガチャッ!
「お邪魔します……」
中に入り。リビングの隣の部屋の扉の前に立ってノックをする。
コンコンッ。
「起きてるか?」
シーンと静まって返事がない。
「入るぞ」
扉を開け中を覗くとカーテンが締め切っていて、暗くなっていた。
そのままカーテンの方に向かい太陽の光を差し込むように仕向ける。
「––––っ! んんっ」
ベットの方から何か動いていた。
眩しかったようで、そのまま布団の中を被りサナギみたく丸くなってしまっている。
「ほら、由奈。起きろ朝だぞ」
丸くなってるサナギを叩くとちょこっと顔が見え寝言を言っていた。
「清吾お腹一杯……。あぁ、たこ焼きに飲まれてはダメだぞ。そっちは……あぁ清吾がイルカの大群に飲まれたく」
「なにに飲まれてるんだ一体……」
朝から寝言を言ってる彼女の名前は
「ほら由奈。起きろ朝だぞ」
「……すや」
「寝るなって!」
こうして由奈を起こしているのには簡単な理由がある。
朝が弱いということだ。それで俺が毎日起こしている。
「ほら、遅刻するぞ」
何度か体を揺するとムクっと起き上がった。
「……んん清吾?」
「おはよう由奈」
「……おはよう」
目を擦っていると由奈の綺麗で肌白い素肌が見え、少し胸元の膨らみが現れた。
「――っ!」
も、もう少し見えそうだ……。
なにが見えるか?
自然と目がそっちの方に吸い込まてしまっている。
邪念が纏わり付き由奈の胸元の方に力一杯目に焼き付けよ頑張っている。
……いや。違う。ただ幼馴染を起こしにきただけ。
紳士の心で目を逸らす。
でも、少し見るだけなら。いや、見るな俺。紳士的な対応をするんだ。
少し成長していると言うのは心の中で唱えるんだ俺!
「清吾。どうしたのだ一体?」
首を傾げながら自分の煩悩からようやく目が覚めた。
「い、いやなんでもない!」
俺は精一杯首を振り後ろに振り返向く。
「ほ、ほら。朝ごはん出来ているから着替えて!」
「はーい」
よく頑張った俺!
そう自分で褒めながら部屋に戻って壁に寄りかかる。
あー。朝から良いのが見れた……。
女子の肌が見れて嬉しいというのは男として当たり前なんだが、それよりも好きな子の胸が見れたという本音で嬉しんだ。
え? はい嬉しいですよ。
すると扉が開き。由奈はこっちを見ると首をかしげていた。
「清吾どうしたのだ? そんなところに立って……」
由奈がまだパジャマのままだった。
「制服は?」
「朝飯を食べたら着替える。ほら、清吾の朝飯を冷ますといけないからな」
「着替えるの面倒だったんだな……」
「パジャマのままで向かっても平気だろうと思ったのだが……」
こっちをチラチラと見てくる。
本当に着替えるのがめんどうだったんだな。
「じゃあ上だけ羽織って朝飯を食いに行くぞ」
「ほーい」
俺の家の方に向かい朝ごはんの用意をしてテーブルの上に置き。手を合わせいただきますと唱える。
「「いただきまーす」」
由奈とは小学生からずっとそばに居て、近所も隣同士で小、中、今の高校二年生までずっとそばに居る。いわゆる腐れ縁というやつだ。
俺は実のところを言うと由奈が好きなんだ。
なぜ好きか?
簡単な話だ。長年ずっと一緒に居たから何処が好きかと言われたら自然と好きになっていた。
……よくある話だ。
「清吾の卵焼きは美味いな」
「それはよかったな。お弁当にも入っているからな」
「おぉ! 流石は我の眷属だな」
「誰が眷属だよ」
好きだが、告白するにはどうすれば良いのかわからない。長いこと過ごしてきた幼馴染だ告白するタイミングが掴めないからだ。
朝ごはんを食べ終え由奈は席から立ちあがった。
「クククッ! 我が衣を纏い。聖なる技も跳ね返す。完全防具服に着替えるとしよう……」
要するに制服に着替えるらしい。
「いってらっしゃい」
好きとう気持ちがある。だが向こうは俺のことを本当に兄みたいなところもあり。だから告白をして失敗したら嫌だ。それらの関係性を崩すことになりかねない。
そう思っていたらこうして高校二年生になっていた。
いままで告白が出来ずにいるから、俺自身めんどくさいのだ。
皿洗いを終えると制服を着替えた由奈が登場していた。
「フッ! 待たせたな清吾よ……」
少し口調がおかしかった。
こいつ《ゆな》は中二病だ。理由は……。いつかわかると思う。
「じゃあ行くか」
「了解した」
外に出て歩いてみると、満開の桜の一枚一枚ゆっくりと舞い落ちていた。
「おお、綺麗だな清吾」
「そうだな。4月になれて嬉しいな」
「春……。この4月にして高校の二周目。我が力を付けるべではないか清吾よ」
「そうだな勉強とか頑張らないとだな」
「……ベンキョウ? それは食べ物か清吾?」
「こいつ逃げやがった」
高校1年の時。赤点で勉強嫌いなんだよな。
「……ふふふっ案ずるな清吾よ。我が新たな物を手に入れた。それで勉強という概念がなくなるだろう」
「なにを手に入れたんだ?」
「えっとちょっと待って……」
鞄のチャックをあけガサゴソと漁っていた。
「ふふふっ。これを付ければ我が、魔力はさらにアップする! クククッこの世の混沌を支配するのに素晴らしい。勉強なんてしなくても問題ない!」
「勉強はしておけ」
多分アクセサリーとかストラップだろう。
由奈も女の子なんだなやっぱり……。
昔は俺のあとをくっついて真似ばかりしていたけど、そういった女の子という年頃なんだな……。
なんだか妹が成長していくんだなと兄心があった。
由奈の方を見ると左目のところに眼帯らしきな物をして隠していた。
「……?」
がん、たい…………?
なんで由奈は朝から眼帯をしてるんだ。
いや、俺も中学の時は眼帯なんていうのを付けてしまっていたが由奈が付けているだと……見間違いであって欲しい。
再び由奈の方を見ると見間違いじゃなく病院が治療するガーゼ方の眼帯をつけていた。
見間違いじない……
「由奈さんそれは?」
「これか……。ふっ。よく聞いてくれたな清吾よこの眼帯は世界の真理が見抜くためのものなり。我が魔王の一族に伝わる秘伝の魔道具なり」
そう言ってドヤ顔をしていた。
「やめてくれ……。頭が痛くなる」
過去の悍ましい自分を見ているかのようで恥ずかしすぎて、寒気が襲ってきた。
「ふっ、清吾。なにを怯えておるのだ? 清吾も中学二年の時にしていたではないか」
「やめろ!」
怯えるじゃなくって恥ずかしいんだよ! 由奈の前でスゲーカッコいいだろうとアピールをしていた頃の俺! やめろ! 死にたい! 恥ずかしすぎて死にたい! 記憶を抹消してくれだれかぁぁぁぁ!
道路で転げ回る。
「何だ清吾その技は新しい技でも閃いたのか! ローリングフェルオースト・トードアーツかっ!」
「ち、違うわ!」
あと名前が長い!
「いいから眼帯は外してくれ恥ずかしいから!」
俺は由奈の眼帯を思いっきり引っ張った。
「い、いや! これがないと集中出来ないの!」
「それがなくても集中出来るから!」
俺は由奈の眼帯を取ろうと引っ張ったが、由奈も抵抗してきてゴムが伸びていく。
「は、放せ清吾! 清吾のアホ!」
放せ? よし、良いだろう。
力一杯、極限状態に伸び切ってる眼帯をパッと放し。そのまま由奈の目元に直撃した。
「はうっ!」
そのまま由奈はしゃがみ込む。
「うぅ……このような卑怯な技を使うなど清吾よ。貴様は勇者の仲間か!」
「勇者の仲間じゃねえよ」
「そうか……さすがは我に力を授けた元魔王だな」
「やめてくれ……。それに魔王じゃないし」
由奈が首を傾げていた。
「だって清吾は魔王に転生したものなのだろう? 聖書にも書いてあろう」
「……いや書いてない」
そんな聖書なんていう物は知らない。記憶の片隅にも残っていない。
「書いてあるではないか清吾よ」
「そんなのしてないだろ」
由奈は顔を膨らませていた。
「書いて約束を交わした!」
由奈はバックから一冊のノートを取り出してきた。
「なっ! やめろ、そのノートを出すな!」
その聖書と読んでいたノートは俺が中二病を卒業しようと決心したとき由奈に渡してしまった封印すべきパンドラのノートだ。
やめろ……。やめるんだ由奈。
俺の叫びは由奈には響かず、ページをぺラぺラとめくりまくる。
「ほら、ここに書いてあるぞ清吾! セクシリア・ノーバンと書かれてる下のところに後継者って由奈って名前が」
指でトントンとしていた。
「「やめろろろろろおぉぉぉっ!」」
大声を叫びながら地面に転げ回る。
やめて! 本当にやめて! なんだよ俺! セクシリアって! 清吾の名前を少し変えようって思ってんじゃねえよ!
恥ずかしいことしてんじゃねえよこの野郎! 俺のバカ野郎!
由奈にカッコイイところを見せようってなに中二をやってんだよ! 他にもカッコいいところを見せろよ俺っ!
片手で地面の方に向けると叫んでいた。
「この食い方は正しくアイスブレーク!」
俺が考えた名前を発言するな! やめろ! 恥ずかしくい……。本当にこの幼馴染を止めてくれ!
「ならば清吾の取り憑いている勇者の魂を取り除いてやろう!」
由奈は仁王立ちをページを開きながら力を溜めていた。
「はぁぁぁぁ! これが清吾が考えた最強呪文の一つ、グレートフル・メサイヤ!」
「「やめろ! ゆななぁぁぁぁ!」」
これが面倒くさい幼馴染と毎日なのである……。
幼馴染が中二病なんだが、好きなんだよな結局…… 二髪ハル @2kamiharu
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