第10話 テッドと報酬。
オプトとの夕食。
オプトはテッドの活躍を知りたがり、リリオがテッドの代わりにオプトに話をする。
オプトはテッドが火と水のエレメントを使えた事に感動をして食事どころではない。
「でもやり過ぎよやり過ぎ。オーバーキルよ」
「やり過ぎですか?」
「ゴブリン一匹倒すのに巨木みたいな火柱起こして消えないからって大量の水で消そうとして爆発させるんだから」
「それは確かに…」
オプトは「ははは」と渇いた声で笑うとテッドを見る。
テッドはオプトの視線を感じてオプトを見る。
「それではテッドさんは巣の除去も出来そうですね!」
「巣?」
「はい。ゴブリンでしたら陽の刺さない洞窟や森の奥地、首狩り蟷螂でしたら森の木に巣が作られていてそれが街に来るんです。
今回みたいに街が襲われると教会から巣の探索と除去がクエストとして出ます」
「なるほどな」
テッドは巣がある事を聞いて何となく納得をする。
そしてそれを除去しないと街はまた襲われるしそう言うクエストがあってもおかしくないと思った。
「受けてみるか…、リリオは?」
「私はパス。私は無謀なクエストは受けない事にしているの。
テッドなら生き残れても私は多勢に無勢で殺されちゃうわよ」
確かに昨日見たリリオの戦闘力では危険な事はわかる。
「そうなるとマネジメント料は無しだな」
ついて来なければ報酬から3分の1を支払う必要は無い。
「何で!?」
リリオが声を荒げてテッドを睨む。
テッドにはそれが理解できなかった。
「何故働かない者に金を支払う?」
「くっ、オプト君。通常巣の探索と除去の報酬は?」
「え?ちょっと待ってくださいね」
オプトはメイドに聞くとメイドが駆けて行きすぐに戻りオプトに耳打ちをする。
「探索が150エェン。除去が300エェン。
それとは別に一匹倒す度に1エェンが支払われます」
「うっ…金額は魅力的…、でも受けたくない」
「何故だ?」
「なんでもよ!」
これも後でオプトがテッドに教えていたが心がサルディニスに来ていないプレイヤーは一定のルールに従う風に出来ていて、ルールはそのプレイヤー自身が決められる。
リリオの基本ルールは[クエストは無理のないモノ、戦いは極力しない、日銭を稼いで宿屋で生きていく]と言うモノになっていた。
他にも冒険に出ないでスローライフを楽しみたいプレイヤーは「クエストは採取や瓦礫除去の安全なモノ、戦いはしない、家庭を持って平和に暮らす]を選択したりすると言う。
そう言うプレイヤーの事を知っているオプトはリリオに対して「ではリリオさんには僕から個人クエストを頼みましょう」と言い出した。
個人クエストはスタッフからプレイヤーに出せる個人契約のクエストで教会を通す事なくおこなえる。
悪意に目覚めたスタッフの報酬未払いや死地に追いやるクエストも有るにはあるが、それをしてしまえばスタッフは死後マイスタとして転生させられる事を知っているので行う者はほぼ居ない。
「何を頼むの?」
「テッドさんの案内と監視です。
地理に疎いテッドさんを巣の近くまで案内してやり過ぎないように離れた安全な場所からテッドさんを監視するんです。
報酬は30エェンでどうでしょう?」
リリオは「うっ…悪くない」と悩んだ後で「受けるわ」と言った。
「ありがとうございます。ではテッドさんは明日朝教会で巣の探索と除去を受けてください」
「わかった」
そして今テッドとリリオは朝の教会に居た。
今朝も昨日と同じテッドを呼んで悪態をつく声の夢を見たが声は昨日以上に聞き取れなくなっていた。
「おはようございます」と僧侶が挨拶をしてくる。
「クエストを受けたい。そして一つ聞きたい」
「はい。なんでしょうか?」
「昨日、鑑定を受けていない祝福を試したら発動をした。
今鑑定を行うとどうなる?」
「恐らく見えます。私の鑑定はオプト様と同じですがやってみますか?」
「頼む」
僧侶が鑑定を使うとテッドにエレメントの祝福が見えた。
だが問題もあった。
エレメント・ファイア、エレメント・ウォータまでは昨日使ったから見えると思っていたのだが後はアイスとサンダー、ウインドの全属性を授かっていた事が判明したのだ。
「うわ、何それ?あんた非常識にも程がある」とリリオが物凄い顔でテッドを見る。
「8個の祝福ですか…初めて見ました」
僧侶も驚きの目でテッドを見る。
「そうか。ではクエストだ」そう言った所で昨日のクエストの報酬がまだ支払われていないと言われる。
確かにテッド達は昨日あの爆発の後、どこにも寄らずにオプトの屋敷に帰っていた。
僧侶が今精算しますねと言って「記録の札」に鑑定をする。
「ゴブリンが九匹。首狩り蟷螂が五匹、擬態石虫が二匹ですね」と言われて身に覚えのない魔物までいた事にテッドが驚く。
「ああ、きっとあの火柱の下に居たか爆発に巻き込まれたのよ」とリリオが教えてくる。
ついでにテッドは擬態石虫について聞く。
「石に擬態して近くを歩く人間の足に噛み付く虫です。
噛む力がとても強く子供で有れば骨折するケースもあります」
あの場には弟子の男の子も居たので倒せて良かったとテッドは思う。
そして報酬が支払われた。
報酬はテッドとリリオ、それぞれに48エェンで「記録の札」に貯めることも出来ると教えて貰う。
「え?私も?」
「はい。テッド様と共に受けられておりますので昨日のクエストはチームとして登録されております」
「でも倒したのはテッドで…」
「はい、存じております。ですがチームで有れば前衛と後衛や支援の関係で魔物の討伐数は変わります。この世界はイィト様が不平の起きないようにしてくださって居るのです」
テッドはそれを聞いて良くできて居ると思ったが、自身に8個もの祝福が有ると言うことは不平にならないのか?と思い始めていた。
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