第4話 テッドとリリオ。

気絶をしたテッドが目覚めると何処かのベッドに居た。

そもそも階段で緑色の魔物を倒している時に頭が白くなった所まではしっかりと覚えているのだがその先は曖昧でならない。


「どこだ?どうなった?」


テッドは独り言のように思った事を口にする。



「ここは僕の屋敷ですよテッドさん。目が覚めましたか?」

声の方を見るとそこにはオプトが座っていた。


「オプト?」

「はい。あの後騒ぎが収まってからテッドさんを探して外に出たら教会で倒れられていました」


「俺は教会まで行ったのか…、それで倒れた俺をオプトが運んでくれたのか?」

「僕だけではありません。リリオさんも手伝ってくれました」


「リリオ?誰だそれは?」

「え?テッドさんが助けた女性の方ですよ」


「済まない、思い出せない」

「えぇ?何それ?」

オプトの反対側から声がする。

テッドが振り向くとそこに軽装の女が居た。

階段から見ていた時に豪華な鎧を着た人間と一緒にいた奴は女だったのかとテッドが気付く。


「君がリリオ?」

「そうよ。さっきまで散々女って呼んでいたのに覚えてないのね」


テッドの態度にリリオが訝しげな顔をする。

「済まないリリオ。良かったら俺は階段で緑色の魔物を倒した所までしか覚えていないんだ。

リリオの知る範囲でいいから俺の事を教えてくれないか?」

「構わないわよ」

リリオはテッドの変貌ぶりに驚いてキョトンとする。


「あなたは多分このお屋敷の階段から私達を見ていたのよね?」

そう言って街の入り口を突破されたリリオと豪華な鎧の男が教会前で魔物を迎え撃っていた所にテッドがやってきて緑色の小さな人型の魔物「ゴブリン」と緑色のやや大きな虫型の魔物「首狩り蟷螂」を倒した話をする。


「テッドさん凄いです!」

話を聞いていたオプトが盛り上がって興奮している。


「剣を両手に出して首狩り蟷螂と斬り合うなんて本当にテッドさんは凄いですよ!」

「両手から剣か…」


そう言ってベッドから降りたテッドは「【ライトソード】」と唱える。

光の剣は右手にしか生まれなかった。


「一本だ…」

テッドが不思議そうに言う。


「あの時、あなたはその祝福を二度唱えたわ。多分一度ではダメなのよ」

リリオがテッドに見解を伝える。それを聞いたテッドも確かにそうかも知れないと思っていた。

右手に剣がある状態でテッドは更に「【ライトソード】」と唱える。


そうすると左手に黄色い剣が生まれる。


「わあ!凄いですよテッドさん」

「そうか?」

凄いと言われても実感の湧かないテッドだったが悪い気はしない。


「でも無理しない方がいいわ」

リリオがテッドに警告をする。


「何がだ?」

「多分、さっき倒れたのって祝福を短時間に使い過ぎた時の症状だと思う。

まだ身体が祝福、この場合2本の剣に耐えられないのよ」


そう言われると確かに疲れるので妙に納得をしてしまう。

「そうだ、少し聞いてもいいか?ソードマスターの祝福は唱えても何にもならなかったんだ」


「私も祝福には詳しくないのよ。

折角教会があるんだから聞きに行きましょうよ」

「じゃあ僕も行きます。テッドさんの事を教会に説明をして神様に迎えに来ていただきましょう」


この不思議な会話を聞いたリリオはキョトンとした後で「何?オプト君も教会に用があるの?一緒に行こうよ」とにこやかに誘う。


「では僕は使用人に出かける旨を説明しますのでリリオさんは玄関でお待ち下さい」

「わかったわ」

そう言うとリリオは1人で部屋を出て行ってしまう。

なんだかその姿には妙な違和感があった。

そしてオプトがテッドを見る。


「オプト?」

「テッドさん。なるべく早く理解をお願いします。

彼女はプレイヤーです」

プレイヤー、さっき庭でオプトと話した時に言っていたものだ。

この世界にはマイナススタッフ、プラススタッフ、スタッフ、プレイヤーが居ると。

テッドとオプトはプラススタッフ…プラスタだと言っていた。

彼女はプレイヤー。

なんの違いがあると言うのだ?

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