第15話3
僕の息子はサッカーが好きだ。地域のチームにも入って練習や試合を休日によくやっている。平日も学校が終わってから活動していると嫁から聞かされているがそこまでは僕も見てないからよく知らない。ただ、たまに休日の試合や練習を見に行ったりはする。そこでは親によって温度差があり。我が子を、我が子をという親を見たりもする。チチローという言葉を思い出したりする。親が子供に欲を持つとどうしても自分の自慢のものになってしまうのだろう。僕が子供の頃はどうだっただろうとか考えたりもする。そりゃあ、いい高校へ、いい大学へとかは言われた記憶がある。それも母からだけで、父からはそういうことは一切言われた記憶はない。父親とキャッチボールをしただとか、運動会を見に来てくれたとか、授業参観に来てくれたとかもなかった。ただ、娯楽もない中、父がよく言っていたことがある。
「本を読め。図書館ならタダで借りれる」と。
僕は幼いころから町の図書館でよく本を借りていた。その町の図書館にはいろいろとルールがあり。紙の会員証みたいな、今でいうところのレンタルビデオ屋のカードみたいなのを作れば一回につき十冊まで、期限は一週間のルールで本をタダで借りることが出来た。もちろん図書館で試し読みというか。時間内ならいくらでも読むことも出来。本を読むための椅子や机もあり。静かに読むというルールさえ守れば子供でも利用できた。また、その図書館にはカセットテープ、今でいうところのCDも貸し出していて。落語とかアニメの曲とか、外国の人の音楽とか。カセットテープは本とは別カウントで。確か五本まで貸し出してもらえた。本を十冊とカセットテープを五本借りては一週間を過ごす。確かに二―ル・セダカを知ったのもその図書館でカセットテープを借りたからだ。『涙の小径』を日本語で歌うニール・セダカは小さい僕にとって衝撃的だった。今になって坂本九がアメリカのビルボードで一位になったのも分かる気がする。坂本九の歌い方はあのニール・セダカが日本語で歌う感じに似ている。そして本を読むことはとても面白かった。一週間で読み切れなかった本は一回返却してからまた借りる。でも別の人が予約していたら借りれない。特に面白かったのは『少年探偵ブラウン』という作品だ。事件編と解決編があって。それを推理するのが面白かった。文章の中に必ずヒントが入れてある。「十八時という表現を使ったから犯人は駅員」とかそんなレベルではなかった。他にも印象深い作品はたくさんあったけどタイトルまではあんまり覚えていない。ただ、言葉は覚えている。その一つにこんな言葉があった。この言葉はネットには出てこないけれど僕は確かにその言葉を読んだ記憶がある。
「子供は自分が思うより三年遅く、親が思うより三年早く大人になる」
今でも僕は自分の記憶を辿ってみる。バーナード・ショーだったような。でも確信はない。僕が一番この人ならそういう表現をしそうだと思うのがバーナード・ショーであり。でも違ったような気がするのも事実であり。それでもネットが使える便利な現代でたまに「バーナード・ショー 子供は自分が思うより三年遅く、親が思うより三年早く大人になる」で検索してもヒットしない。別にモヤモヤしたりはないけど。それが誰の言葉なのかいつか知りたいとも思っている。
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