第八話 台風とお店再興

 逢坂おうざかの街を、途轍もない大嵐台風が襲いましたのは、峰が長男をうしないました頃。。

 ようやっと開いた店の二階まで、打ち寄せた大水に浸かったので御座ります。

 瓦が吹き飛ぶ屋根にしがみつき、死に物狂いで耐えた暁に迎えましたのは、使い物にならなくなった洗濯クリーニングの設備と、泥水に晒されてゴミと化した家財で御座りました。

 大嵐台風は、天の配剤。天災で御座ります。

 唯人なれば、どちら様にも怒りの矛先など向けられぬは道理。

 文句の一つも口の端に乗せず、瓦礫を片づけたので御座りました。

 再び店を開けようかと算段がつきました頃合いに、お上よりくだされた援助物資が、花茣蓙はなござ一枚。。

 心底、気持ちは有り難く頂戴致しましたものの、なんと申せば宜しいので御座りましょうや。。

 まぁ、それはさておき、店が再興致しまして程なく、峰に第二子が誕生致しました。

 色白で、其れは可愛らしく愛らしい、女童めのわらわで御座ります。

 大喜びの峰が溺愛し、妻のハルは、乳母日傘おんばひがさで育てたので御座いました。 

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