第五話 恋さんの片思い
峰が丁稚から昇格し、アイロンの使い方を教えていただき、一人前の職人に成れますよう修行を始めて、五年目の夏で御座ります。
二十歳を少々過ぎますれば、重たいアイロンを扱えるほどに体躯もできました。
そうなりますれば、見め良い男振りに成長しました峯を、陰ながら伺いに来られる
仕事場は、一台ごとのアイロンに蒸気を起こすボイラーがついておりまして、冬でも汗の流れる過酷な場所で御座ります。
夏とも成りますれば、それはもう筆舌に尽くし難く、袖無しの綿シャツが、べっとりと肌に吸いつきまして、玉のような汗が滴ります。
仕事に没頭する
お
渦中に居ります峰が、泰然と構えて居りますのが、救いで御座ります。
どちら様も、ほとほと頭の痛い出来事で御座りました。
日にちが過ぎます
ある日を境に、お姿が見えぬように成りました。
そうして夏も過ぐる頃で御座りましょうか。
仕事を終えた峰が、夕涼みに表へ出た時で御座ります。
「うち……
「はぁ、さようですか……」
急な事に、言葉が続きませなんだ。
しばし切なげな恋さんで御座りましたが、可愛らしい下駄で一蹴り、地団駄を踏んだので御座ります。
「もぉ、好かんタコ! 」
駆け去る恋さんに、意味も分からず首を
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