第2話今度は勇者に告くられる

 卒業パーティから3日間、俺様とあーちゃんは必至に婚約回避プロジェクトを考えた。だが、どうにもならなかった。カール王子の時は1年以上かけて罠にかけた。だけど、イェスタ王子は突然で、そんな簡単に考えが思いつかなかった。


 ほとんどゾンビの様な感じで、聖殿に向かう、来週は成人の式典がある。その後はイェスタ王子の求婚に答えるしかない。拒否? 普通死刑になるな・・・・・・


 悪夢が現実になった。いくら王子様でも、男のお嫁さんは絶対に嫌だ。俺様が好きなのは女の子なんだ。男じゃねえ!


 だから俺様を嫁に求められても、絶対に無理なんだよ。頼むから本物の女の子に恋をしてくれ王子様。絶対お互い報われねえぜ。


 段々、考えたくない未来が頭を過る、それは夜のお勤め、女として。☆☆☆男に犯される。顔面が蒼白になった


「う、ぐっ……うぅえぇぇぇん……」


 聖殿に向かう途中、たまらず泣きそうになった俺様に


「お幸せに!」

「良かったね!」

「羨ましいわよ!」


 魔法学校の同級生の女の子から声を掛けられる。みんな、俺様が幸せ掴んで泣いていると思ってやがる。ちきしょー。誰か代わってぐで――――――


 聖殿について、さすがに心を整えて、聖殿の式典に臨む、式典とは聖女の確認の儀式だ。聖女とはこの国を守る女神エリス様の神託で、毎年数人選ばれる。方法は神官の水晶玉に手をかざして、認定されると聖女だ。聖女だと、水晶玉が虹色に輝くそうだ。つまりSSRガチャ引いた時みたいな感じだ。


 今年の聖女は赤い眼を持つ少女から選ばれるそうだ。俺様の瞳も確かに赤だ。おかげで、成人の式典の前にこんなめんどくさい儀式に出なければならない。


 ゾンビの様なノロさで歩いたせいか、俺様の水晶占い、もとい、水晶の選別の儀の順番はかなり後ろの方だった。


 そこで、友達にあった。アン・ソフィー、いい子だ。乙女ゲームの主人公。さすがに主人公、謙虚でおとなしく、可愛い。俺様のお嫁さんにしたい♡


「クリス様、おはようございます」


 アンは俺様の事をクリスと愛称で呼ぶ、最初は貴族の俺様を愛称で呼ぶ事に戸惑った彼女も6年間の長い付き合いで、今ではすっかり普通にクリス様と呼んでくれる


「おはよう、アンちゃん」


 俺様は親しい人にはだいたいちゃんつけで、呼んでいる。ただし、俺様にちゃんづけは許さん。断固許してこなかった。だから、アンちゃんもクリス様と呼ぶ、決してクリスちゃんとは呼ばないのだ。長い教育の賜物だ。


「卒業パーティの時はごめんなさい。私、何て言っていいのか・・・・・」

「気にすんな。俺様、あれ位でへこまないぜ!」


 一応、王子のカールに振られてショックのフリ位はしとく、疑られるのも困る。アンちゃんは俺様のお気に入り登録順列第三位だ。ちなみに第一位はメイドのあーちゃんだ。


「アンちゃん。幸せにしてもらえよ!」

「クリス様も、良かったですね。私、安心しました。先日は涙が出ました。やはり女神様はいらっしゃるんだと思いました」


 うーん。いい子だな――――――俺様のハーレムの第三位だ。一番はもちろんあーちゃん。だけど、嫌な事を思い出させるなぁ。


「は、はは、お互い頑張ろうぜ!」

「そうですね」


 アンちゃんはにっこりと流石にメインヒロインという貫禄の笑みを浮かべる。俺様癒される~。


 そうこうして、聖殿の列に並ぶ、聖女に平民も貴族も区別ない。到着した順番に並ばされる。もちろん、かなり上流階級の俺様も公平に並ぶ。


 列は3列程あった。俺様とアンちゃんは別の列に誘導された。そして、後から来たアンちゃんの方が先に、水晶の選別の順番が来た。


「さあ、水晶に手をかざしなさい」

「はい」


 アンちゃんが水晶に手を差し出すと、水晶が輝き出した。虹色だ!

SSR来たー!


 大騒ぎになった。流石メインヒロイン、こんな処も違うのかと思った。既に乙女ゲーム世界はこの間のカールとアンちゃんとのハッピーエンドで終了している。その後の話は誰にも解らない。


 なんか、凄い待たされた。貴族の俺様がこんなに待たされるの初めてでびっくりした。でも、ようやく俺様の順番が回ってきた。早い所済まして、来週の成人の儀の準備せんと...


「さあ、水晶に手をかざしなさい」

「ああ、わかったぜ!」




 俺様は冷や汗が出た。何故なら、水晶に手をかざした瞬間、水晶が輝き出した。虹色に!


「嘘だろ!」

「なんと、同じ聖殿から今年は2名も!」


 神官達が慌てふためく。正直、もう許して・・・これ以上、俺様に何をさせたいの?

こうして、俺様とアンちゃんは二人で神官の説明を聞く羽目に陥った。


「お二方は週1回、日曜日に近くの神殿でお祈りをして頂く事になります。また、神殿の聖騎士が護衛に絶えず付き従う様になります。あとは、宮殿の大聖堂で女神様降臨の折、役割が告げられるでしょう」


・・・・・・メンドクサイ・・・・・・


 こうして俺様は聖女になった。しかし、俺様が聖女になった事よりも、もっと大きな問題が発生していた。それは、女の子のイベントである聖女と同時に、男の子にもイベントがあったからだ。それは、勇者の確認の式典。その式典も、この聖殿で行われていた。俺様はまさかあの、モブ同然の男が俺様に関連してくるとは思わなかった・・・・・・


 唐突にその男はやって来た。いや、顔を合わせるのは当然だろう。彼は俺様の幼馴染であり、友達であり、珍しく人畜無害な男なのだ。だが、その無害な男がまさか最有害男子になるとは思わなかった。彼とは幼馴染で、お隣さんの男爵卿のアルベルト・ベルナドッテだ。


「クリス!」


彼は俺様の名前を力強く呼んだ。何故か鳥肌がたった。


「どうしたん?

 アルベルト?」


 俺様には幼馴染の舎弟がいた。彼は俺様の舎弟だ。昔から弱虫で、俺様が守ってきた。だが、いつもと様子が違う、なんというか、以前全く感じた事の無い、”自信”。それが彼から感じられた。


「勇者の選定の儀で、水晶が光り出して、力がみなぎってきたんだ。そして、僕、勇者に選ばれたんだ!」

「はは。なんだよ、それ。まるで、主人公みてぇで、良かったじゃん!」

「今までありがとう、クリス。いつも弱虫の僕を助けてくれて・・・・・・でも、これからは・・・・・・」


俺様は鳥肌が更に進んでもう宇宙人のグレーの肌になっていたかもしれない。


「気づいたんだ。僕にとって、クリスがどれだけ大切な存在なのかを! 君がどこかの国の王子様に取られるかと思った瞬間。絶対に曲げられない気持ちに気付いたんだ!」

「ま、待ってよ。アル! 俺様達は友達だろ? そりゃかけがえのない友達って言われるのはわかる。俺様だって友情を感じてもらうのは嬉しいよ」

「……いや、これは友情なんかじゃ・・・ないよ」

「お、おい・・・なあ、何を話してるんだ?」

「・・・・・・僕は、クリスを愛してる!」

「ひぃっ、く、くるなぁ……こないでっ! やめ、やめで」

「僕の・・・恋人になって欲しい!」

「くるなぁ、やだ、やめ――――あぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」


 信じられない事になった。唯一の安全な男だったアルが俺を狙うオスになった。いくら幼馴染でも、男のお嫁さんには絶対になりたくない。考えただけでも鳥肌がたった!!!!!


わぁぁあ! びっくりした!

やあだぁ!

やだぁぁあああああ!


「ひぃぃ‼

 ひぃぃいいいいいい!」


 優男で大人しくて、いつも俺様の後を弟みたいについて来てたアル

そんな・・・アルが俺様に告白している?・・・嫌だぁぁぁぁ!

うわあああああ! 気持ち悪い! 男にときめく女になんてなりたくねぇぞ‼

うそだうそだうそだ!! アルはそんなじゃねぇぞ!?


 俺様がアルの嫁?

絶対無理!!!


「お願いらから・・・やめれ・・・・れぇええええぇぇええええええ!!!

う、えっぐっ・・・・・・うぅうぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんんん・・・・・・」


最後に俺様はぎゃん泣きした。その後、俺様が嬉し泣きした事になっていた時には殺意が沸いた

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