第3話第三回破滅フラグ回避会議
作者より:先ず、このアトランティス王国侯爵令嬢クリスティーナ・ケーニスマルクのおかれている状況を説明しよう。
彼女は生物学的には女である、だが、中の人は男である。彼は現代日本からこの乙女ゲームエターナルラバーの世界に転生した転生者だ。その為、彼は、結婚なんてしたくないのだ。男にときめかないし、女として男女の睦事など、自殺ものなのだ。
そして、メイドのアリシア、愛称あーちゃんも又、現代日本からの転生者である。この世界が乙女ゲームエターナル・ラバーの世界そのものであり、クリスがこの世界の悪役令嬢であるクリスティーナ・ケーニスマルクその人である事を教えたのもあーちゃんである。
そして現在苦慮している案件が、本来無い筈の破滅フラグだ。クリスにとっては結婚は破滅フラグなのだ。困った事に・・・・・・
更に問題を悪化させているのは、求婚が二人から来ている点だ。一人は隣国の王子イエスタ・メクレンブルグ、もう一人は幼馴染で男爵卿で勇者のアルベルト・ベルナドッテだ。この問題だけでも頭が痛い。どちらかを選ぶだけでも、問題なのだ。王子を断れば、隣国との間に亀裂が生じかねず、勇者からの求婚を断れば、この国の権力者達でもある、教会を敵に回しかねない。納得の行く、説明をする必要がある。
そして、一番の課題は両方フりたい点だ。隣国の王子、勇者であり幼馴染からの求婚、普通、どちらも最高のシチュエーションだ。もし、断れば、誰もが不審に思う。男に興味がなく、女性にしか興味がない同性愛者である。という事を告白する事はできない。何故ならこの国では女性同士の同性愛は禁止されており、発覚すれば死罪である・・・ちなみに男性同士は何も制限がない、それどころか堂々と小姓を娶る貴族がいる位だ。とことん男尊女卑な世界なのだ。さあ、彼女(彼?)に待っているのは破滅(結婚)or破滅(死刑)?
「あ”ーちゃぁぁぁん。俺様どぼちようぉぉぉぉぉ!」
「クリス様、先ずは落ち着いて下さい。冷静に考えましょう」
「お、おぢ”づ”げ”ないよ”ぅぅ・・・」
「わかりました。実は私に考えがございます」
「ぼ、ほ、本当に!」
「はい、いい考えがございます。逃げましょう!」
「に、逃げる?」
俺様は希望が見えてきて、段々落ち着いてきた。一時は嫁にいかなきゃならないかと思い、ぞぉぉぉぉぉぉぉとしていて、パニックになっていた。
「そうです。求婚を断る事はできません。断る理由を言えば、クリス様が同姓愛者だという烙印が押され、死罪となります」
「死罪って、こ、この国どういう方式、日本だと絞首刑だけど・・・・・・」
「クリス様は貴族であられます。しかし、同姓愛者には厳しく、おそらく、毒ではなく、斬首刑でしょう」
「ざ、ざ、ざ、斬・・・首・・・刑」
俺様そんなの、やだ! 確実にちびる、多分、斧とかで首を斬られるんだろう。そんな怖いの耐えられない。ちびる・・・確実に・・・嫌だ。そんな醜態さらしたくない
「逃げるしかありません。私がお供します」
「本当に? いいのか?」
「はい、私はクリス様の為でしたら、何処へでもお供します」
「どうして、あーちゃんはそんなに俺様に優しいの? 同じ日本からの転生者でも、あーちゃん、いい人過ぎるぞ?」
「クリス様、私にとって、クリス様はかけがいの無い存在なのです。私は転生者ですが、この世界では、下位の貴族が娼婦に産ませた子で、生まれた時から右腕に大きな痣がありました。ですから、私には女としての価値がないのです。失意の元、このお屋敷で働いている中、クリス様と出会い、私は生きる希望を得ました」
「俺様、何かしたっけ?」
「たくさん、問題を起こされました」
「それって、普通、迷惑なんじゃ?」
「私はクリス様の尻拭いする事に生きる価値を見い出しているのです!」
「確かにあーちゃんはたくさん助けてくれたけど、それで、なんで喜んでくれるの? 俺様あーちゃんには申し訳が無くて、いつも感謝してばかりなんだけど・・・」
「クリス様みたいに、下々の者に感謝したり、謝ったり、そんな侯爵令嬢いません。クリス様のファンはたくさんいるのですよ。このお屋敷の者も皆、クリス様のファンですよ」
「俺様、当たり前の事しかしてないぞ。間違えた時は謝るし、助けてくれたらお礼を言うよ」
「侯爵クラスの貴族にとっては何もかもが当たり前で、謝る事もお礼を言うこともありません。それだけではありません。魔法学園では、アン・ソフィさんを何度もかばって・・・魔法学園の聖女と街中では呼ばれているのですよ!」
「俺様が聖女? いや、実際に聖女になったけど、俺様、曲がった事が嫌いなだけだし。なんでそうなるんだ?」
「おそらく、日本の常識をお持ちだからだと思います。この世界の庶民にとって、クリス様の価値観は共感と感銘を受けたのです」
「はぁあぁぁ、変な処で好感度上げちまったのか? だって、俺様、悪役令嬢なんだろ? 好感度が上がる・・・なんて事がなんであるんだ?」
「そうやって、好感度あがって困るクリス様も大好きですよ。私もクリス様の事が大好きなんです」
俺様もあーちゃんの事が大好きだ。もちろん男として、でも、愛の告白はできない。拒絶されたら、もう元には戻れない様な気がする。それだけ大切な存在だ。
「あーちゃんが来てくれるなら、俺様、逃げる。この国から!」
「ええ、逃げましょう。早速準備します。お任せください。出入りの商人等の力を借ります。クリス様の名前を出せば、簡単に協力してくれると思います」
あーちゃん有能過ぎる!
「でも、協力してくれた人に迷惑かけないかな?」
「流石クリス様、そんな下々の者の事を気にされるなんて!」
いや、流石にいい人が俺様のおかげで酷い目にあったら、嫌だろう? あーちゃんはこちらの世界の常識に染まりすぎている様な気がする・・・
「大丈夫かな?」
「大丈夫です。無事逃げおおせたら、問題ありません。証拠も残しません」
「でも、万が一捕まってしまったら?俺様は仕方ないけど、他の人に迷惑かかると俺様目覚めが悪い」
「捕まって時はこう言ってください。二人から選ぶ様な罪な事はわたくしにはできなかったと!」
「それで、まるく収まるんか?」
「はい。魔法学園の聖女たるクリス様が言えば、おそらく誰もが成程と思います」
「俺様、そんな好感度高いのか? なんで、こんな変な女に人気があるんだ?」
「クリス様はご自身の容貌に関してどう思います?」
「悪い表情すると怖い顔になるぜ」
「穏やかな顔をしている時のクリス様は同姓の私でもどきっとしますよ。クリス様はこの国ではアン・ソフィー様と並ぶ美女なのです」
「そんな、見た目だけでなんて、この国の男共はあかんな」
「いえ、だから、外面だけでなく、魔法学園の聖女と呼ばれる内面も美女なんですよ」
「ああ、なんか頭痛くなってきた。やっぱり、外国へ逃げよう。そして、どこかの修道院に駆け込もう」
「それがいいと思います。この国にいると、何度婚約を拒否しても、いくらでも求婚者が現れます。クリス様は魔法学園中等部の頃から、この国では話題の姫なのですから」
「俺様がいつ話題になったんだ? どちらかと言うと幼馴染のアルと街で、いろいろ悪さして、悪ガキだったんじゃないか?」
「クリス様は泥棒した人を捕まえて、その人がひもじくて盗んだ事を聞いて、自分が盗んだと言いはったりとかしてたでしょう?」
「な、なんで、それ知ってるの? 俺様、正義感で泥棒捕まえたけど、かわいそうな奴多くて、つい・・・」
「男でも女でも、その正義感や倫理感、優しさは皆の共感を呼ぶのです。だから、クリス様はあの頃から、ケーニスマルク家の令嬢は変わりものだが、高貴な精神と美しい容貌の、この国一の美姫と称されていたのです。カール王子様という婚約者がいなかったら、大変だったのですよ!」
衝撃の事実に俺様、気を失いそう。俺様はハーレムが夢だ。でも・・・そんなの無理に決まっている。だから、せめて、ひっそりと修道院で隠居させて・・・・・・くだちゃい
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