ペアレス①
「だ、誰だ!」
ある男子学生は茂みの近くの茂みから何かが動いたような音を聞き、手に持っていた槍をそちらへ向ける。
そして、にじり寄るように茂みへ槍先を入れていき、次には一気に自分の右へ薙ぎ払うように横撫した。
しかし、そこには動物のようなものが無く、それを見て風によるものかと安堵した。
気を取り直して他の参加者を探しに歩き始めようと踏み出した一足目。
力を籠める前にそのまま前に滑り始め、次には空が眺められるように倒れてしまった。
「……は」
「これ貰っていくね」
自身の状況を判断し始めようとしたとき、左側から男の声が聞こえ、次には首のタグの紐が千切られていた。
元々考えを始めようとしたところで次の出来事があり、元の思考に戻るまで倍の時間を要した。
(……て、敵か!)
先ほど声が聞こえた方に頭を起こし、手に持っていた槍を突き刺すように動かした。
しかし、槍先は空気を切るのみで、やりごたえを感じることが無かった。
視線の先にも映るのは木ばかり。
こうしてまた一人、脱落者が増えるのだった。
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軍服の腰部分につけていた小さなバックにはタグが8枚入っていた。
ペアレスが始まってから1時間経っていて、最初から出会える相手には時間を掛けずに済ましてきた。
得意魔術の『振動』を使ってはタグのみ奪っていく。
短時間で済ませば、学生相手では動揺してくれて追ってすらない状態となっていったのだった。
昔から森の中を走るのは慣れており、次に抜ける木の間を見つけては合間合間の空間に敵を探す。
こうしてペースを始めから早めているのは、相手の力量が分からないからだ。自分と当たる確率を考える必要はあるが、もう一つはその人に相手を奪われる危険もあった。
最後近くまで生き残ったところで、戦闘数、タグ数が少なければ得点が低くなるのは目に見える結果だ。
(特にピアなんて、どうなっているかわからないし)
見えない厄介な相手を頭に描き、苦笑しながらも次の敵を見つけて、そちらに姿勢を倒して進み始めることとした。
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