ペアレス(朝)⑦
朝礼を手短に終えた僕たちは、着替えの準備を促され、準備の済んだ人からグラウンドに集まることとなった。
準備を済ましグラウンドへ出てみると、既に多くの生徒が自由に待っていた。
ある人達は楽しそうに話し、ある人は準備体操をし、ある人は寝てい……あれは大丈夫だろうか。
服装は「自身が動きやすいもの」とだけ案内されていたので、舞台俳優のように派手な衣装の人から、単色の色に揃えて目立たないようにする人もいる。
そんな人たちを見ながら、自分の服装に目を落とす。
(どうしてこうなるかなぁ)
僕はそこまで服装にお金を掛けたくないと思っていたが、ピアから「私が認める服装じゃなきゃ、勝手に当てつけて、着せるわ!」と言われ、仕方がなく服を買うこととした。
しかし、その服装でも許されず、結果としてダリアント家『黒軍』の幹部軍服を着せられている。
幹部の軍服となると、黒服に緋色の線が2本縦横に走り、簡潔ながらも気品さがある。
肌触りもよく、僕みたいな平民が簡単に着ることができるものではないと直ぐに思ってしまう。
それと……。
「(おい、あそこの奴。黒軍の軍服だぜ)」
「(あいつ、新入生のSクラスのシーシェル様といた―――)」
「(軍服の中でも、あの線は幹部の証だ。確か、今年の新入生にはダリアント家の娘がいるとか噂されていたし、お付きで入ったんじゃ)」
「(今日のペアレス、荒れそうだな)」
「(あの年で力があるなんて。ちょっと話しかけてこようかな?)」
「(そこら辺のパラパラな男よりは良さそうね)」
周りからは、変な会話とともに視線が飛んでくる。
目立ちたくないのになぁ。
そんなに力はないんですよ。
ちょっと魔術が得意なだけで、将来は実家の喫茶店を次いでゆったり過ごそうと思っているだけなんです。
無慈悲にも今の格好では信じてもらえないことを確信した僕は、心の中で泣くしかない。
「お、リクラ。決めてるなー。その服装ということは、ダリアントさんのお付きか」
「待ってくれ、キーク。すべてを話すことはできないんだが、僕はあいつと関係はないんだ」
「そうかそうか。
その呼び方から言うと、婚約者の方だったか。
朝はああ言っていたが、それが原因なんだなー」
「なんか誤解が肥大化している!?
少し思考をとめようか」
準備を終えてやっていたキークに、周りと同じ反応を示され、跳躍すら始めている。
火の始末は早めに限る。
どうにかして弁明を図ろうとしたところ、後ろから話しかけられた。
「そこで何を話しているのかしら。
私のライバルのくせに、へなへなしないでもらえる?
私の評判まで落ちるわ」
「……誰のせいだと思っているんだい?」
キークから振り返り、後ろに立っていたピアに顔を向けた。
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