ペアレス(朝)⑥
マイアさんから離れた後、僕の行き場所は講義室の窓際にあった。
僕の席は、先程から人だかりができているところにあるので近づくことができない。
他の人の席に座るのも申し訳ないので、こうして窓近くで立っていることとした。
(まだ朝礼まで時間があるし……)
どうしようかなと考えつつも、この後行われるペアレスについて自分の中で動きをおさらいすることとした。
そうして考えていると数分、話しかけてきた人がいた。
「おーい、そんなところで何してんだ?」
「いや、知り合いもいないし、僕の席はみんなが集まっているところだから自然とね」
「あー、あの集まりか。
精が出るこって。
あんなことで、楽しいのかね」
茶髪で短めの髪形をし、やや痩せ型の男性だったが、少し気の抜けた様子で僕の隣まで来た。
「しょうがないよ。
容姿と家の地位が備わっている人がいれば、誰もが注目するから」
「お前さんは気にならないのか?
俺は騒がしいところが好きじゃないし、これから先は同級生なんだ。
どこかで話せればいいところだろって思っているんだが」
「僕は……まぁ、同じようなところだね」
本当は知り合いなんですとは言うことができない。
僕としては言ってもいいのだが、ピアから強く口止めされている。
あくまでもライバル関係にある相手だという設定にしたいようだ。
苦笑いしながらも答えると、彼からは「そうか、仲間はいるもんだなあ」とつぶやく。
話をしていると、彼も田舎の町から出てきたようで、実家は食器や置物などのガラス製品を作っているらしい。
「僕の家、喫茶店をしているから、長期休暇の時にはぜひ買いに行かせてもらうよ」
「その時は、注文してくれればお好みに作るよー。
新しいお得意さんが増えれば嬉しいねぇ」
「僕は、リクラ・ウィントリン。
よろしく」
「俺は、キーク・リリドーだ」
こうして専門校で初めての男友達ができた。
そうして話を続けていたところ、僕たちの話に参加してくる人がいた。
「キーク、先に行くなんて酷いじゃない。
私が朝起きれないことを忘れたっていうんじゃないでしょうねぇ?」
「知るもんか。お前が準備を終えるまで待っていたら物事に遅れる。
俺の選択は正しい」
「っく、言い返せない。
ところで、この方は?」
「リクラだ。
さっきから話していて、友達になったんだよ。
リクラ、こいつは俺の幼馴染のエリンだ」
「初めまして、エリン・バルガンです。そこにいるキークとは実家がお隣さんで、幼馴染なの。
私も、キーク以外に友人がいないから、気軽に話しかけてもらえると嬉しいわ」
「よろしく、リクラ・ウィントリンだ。これからよろしく」
エリンは銀色の長髪で、キークより活発そうな容姿だが、どこか清楚さを持っている。
彼女を見て思うことは、ピアも……っ!
人だかりの方、突然、強い殺気を感じた。
これは、過去に何度も感じたことのある凶兆。
「エリンさんの実家は何かしているのかい?」
考えを改め、話を進めることに専念することとした。
こうして、朝礼までの時間は有意義に過ごすこととなった。
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