ペアレス(朝)④

昨日と同じく正門から入ろうとしたところ、昨日とは違う人たちが門番を勤めていた。

今回は何事もなかったため、すんなりと通ることができたが、ピアの場合はどうなるやら。


校内を歩き、昨日、ペアレスについて説明を受けた講義室へ向かう。

周りを見れば何人かが登校し始めており、各々友人を見つけては楽しく会話をしていた。

ピアが外見を素直にしてくれたら、僕は一人にならずに済んだんだけど。

しかし、あのお嬢様であり、真骨頂となりつつある部分なので諦めるしかない。


昨日歩いたことがない所を見ながら歩いていると、見覚えがある後ろ姿がとある窓の中を覗いていた。

傍から見れば、不審者のように見える光景だが、知っているからには無視できない。


「おはようございます、シーシェル様。

このようなところでどうされたのですか?」


呼びかけてみると、ビクッと肩を少し上げ、こちらのほうに振り向いてきた。


「あ、あなたは、確かリクラ君でしたっけ?」

「名前を憶えていてくださり、ありがとうございます。

何か気にされているようでしたので、声を掛けたのですが」

「す、すみません。はしたない恰好を見せてしまい。

……実は―――」


そう言いつつ、先程まで覗き込んでいた方に視線を移された。

僕もそれに続き、近づいて見てみると、たくさんの本が並んでいる部屋があった。

これって……。


「図書館、ですか」

「はい。

朝早く校内散歩していたら偶々見つけたのですが、この様子だとまだ空いていないようで。適当に歩いていたので、この図書館がどのあたりかもわからず、あとで来るにはどうしたらいいか考えていたんです」


窓に手を着きつつ下を向いてため息をつかれる。


図書館については探していた場所でもあったので、こんなところにあったんだなぁと思いつつ、シーシェル様が半分迷子状態だったことにも衝撃を受けていた。

最初に会った小屋では、しっかりされた方だなと感じていたが、まさか、あの場所にいたのはこれが影響しないよね……。


ただ、現在困られているからには助けない他ない。


「シーシェル様さえよろしければ、ペアレスを終えた後に、一緒に来られますか?」

「!?

いいんですか!!?」


先程までの落ち込みはどこへやら、体を勢いよく起こし、僕の右肩に両手を置いてきた。


「この部屋までの道は大体把握できたので、大丈夫かと思われますよ」

「ぜひ、よろしくお願いします!」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る