ペアレス(朝)③

「因みに、媒介の準備は?」

「抜かりはないわ。事前にこの家へ運び込んでいたから問題ないし、栽培も始めているから」

「栽培を?

そんな場所、無かったような気がするけど」


ピアが媒介に使うのは植物の種であるため、元の植物を育てるのには光が必要となる。


昨日、この家に着いた時は、特に家の周りで栽培しているような様子はなかった。

それに、家の作りからも室内でするような所が無い。

別の場所に設けてあるとか?


「まだ案内していないからよ。この後、出る前に連れてってあげる」

「学校に間に合わないようなところは無理だと思うよ?」

「大丈夫。近い近い所なんだから」


楽しそうに話しながら、僕が入れた紅茶を飲むピア。

まぁ、行ってみればわかるか。


そうして、朝食を終えて準備を各々ですることとなった。


#=============#


「ここが栽培場所よ。

いい所でしょ」

「この明るさ、魔道具のひとつ?」


ピアに案内されたのは、家の地下だった。

地下に通じる階段は、キッチンの角に隠れるように扉があり、魔道具によって特定の人物しか開けられないようになっている。


「植物を育てるのに、ただの光じゃないよね?」

「えぇ。

母様が研究で作った物なの。

母様の説明曰く、『植物が育ちやすい環境に、色の光が重要なの!』だって。

それ以上は詳しく知らないけど、家では成長率がよかったわ」


光源の方を見てみれば、直視はできないものの温かみのある色が感じられた。


「ピアの家って、本当にすごいよね」

「あんたも、近いうちにその一味になるのよ?」

「……さぁ、そろそろ行こうか」

「こら、ちゃんと「そうだね、楽しみだ」とか言いなさいよ。

意気地なし!」

「今は意気地なしで結構。

早く行こう」


後ろから文句が幾つも聞こえてくるが、無視をしながら地下部屋を後にする。

あのまま話していたら、本当に遅れてしまう。


その後、専門校へ向かい始めるが、お嬢様のプライド対応のため、バラバラの道で向かうこととなった。

因みに、一番近い道はピアが、遠回りの道は僕となる。


……理不尽とは思わないでおこう。

幾つため息を吐いたらいいかわからなくなる。


こうして、ペアレスに向けて準備は整った。



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