ペアレス(朝)③
「因みに、媒介の準備は?」
「抜かりはないわ。事前にこの家へ運び込んでいたから問題ないし、栽培も始めているから」
「栽培を?
そんな場所、無かったような気がするけど」
ピアが媒介に使うのは植物の種であるため、元の植物を育てるのには光が必要となる。
昨日、この家に着いた時は、特に家の周りで栽培しているような様子はなかった。
それに、家の作りからも室内でするような所が無い。
別の場所に設けてあるとか?
「まだ案内していないからよ。この後、出る前に連れてってあげる」
「学校に間に合わないようなところは無理だと思うよ?」
「大丈夫。近い近い所なんだから」
楽しそうに話しながら、僕が入れた紅茶を飲むピア。
まぁ、行ってみればわかるか。
そうして、朝食を終えて準備を各々ですることとなった。
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「ここが栽培場所よ。
いい所でしょ」
「この明るさ、魔道具のひとつ?」
ピアに案内されたのは、家の地下だった。
地下に通じる階段は、キッチンの角に隠れるように扉があり、魔道具によって特定の人物しか開けられないようになっている。
「植物を育てるのに、ただの光じゃないよね?」
「えぇ。
母様が研究で作った物なの。
母様の説明曰く、『植物が育ちやすい環境に、色の光が重要なの!』だって。
それ以上は詳しく知らないけど、家では成長率がよかったわ」
光源の方を見てみれば、直視はできないものの温かみのある色が感じられた。
「ピアの家って、本当にすごいよね」
「あんたも、近いうちにその一味になるのよ?」
「……さぁ、そろそろ行こうか」
「こら、ちゃんと「そうだね、楽しみだ」とか言いなさいよ。
意気地なし!」
「今は意気地なしで結構。
早く行こう」
後ろから文句が幾つも聞こえてくるが、無視をしながら地下部屋を後にする。
あのまま話していたら、本当に遅れてしまう。
その後、専門校へ向かい始めるが、お嬢様のプライド対応のため、バラバラの道で向かうこととなった。
因みに、一番近い道はピアが、遠回りの道は僕となる。
……理不尽とは思わないでおこう。
幾つため息を吐いたらいいかわからなくなる。
こうして、ペアレスに向けて準備は整った。
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