閑話: 幼き者たち(そのに)
大きな棘を目指していると、その麓に馬車が一台止まっていた。
そして、その周りには人が数人転がっている。
(まさか、盗賊に襲われてる!?)
しかし、馬車の周りには動きがなく、事は済んでいるようだった。
まだ生き残りがいるかもしれないと願いを込めて、急ぐこととする。
その後、馬車までたどり着いてみると、周りに倒れている人たちは既に絶命していた。
遠くから見た時は護衛の人かと思っていたが、倒れている人たちの格好はまるで盗賊のような格好だった。
これって、逆にやられたっていうことかな。
馬車の方に視線を移すと、造りは貴族が使うような良いもので、家紋らしきものが扉の所に描かれている。
ただ、どこの家紋か知っているわけも無く、どうしたものかと悩む。
もし中に貴族がいるとしたら、容易な行動ができない。
「……まあ、確認はしないとね」
扉の部分を軽く叩く。
「(ドンドン)何方かいらっしゃいますか?」
反応を少し待つが、特に返答が返ってこない。
念のためにもう一度同じことをするが、それでも返ってこない。
どうやら、中には誰もいないのか、それとも……。
一度確認はとったので扉を開けてみる。
「……あれ、誰もいない」
馬車内から視線を外に戻し、周りを見渡す。
しかし、先ほどと同じく、倒れている人たち以外に人はいない。
貴族の方はどこへ?
どうしたものかと悩みつつ、まだしっかり見ていなかった大きな棘の方へ歩く。
大人が10人手を繋いで囲んでも足りないくらいの幹で、触ってみるとそれが植物だと知る。
視線を少しずつ上に向けていく。
どこまで続いているんだろう―――ん?
幹を中心に、枝のような小さな棘がいくつか生えていたが、1本に棘とは違う姿を見かけた。
「はぁ、まだ生きていたの。
めんどくさいわね」
「ピア様、そろそろ私に役目を果たしても?」
「駄目よ。
最初から最後まで、私の獲物なの」
上の方から少女と男性の声が聞こえてきたのであった。
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