初夜(期待は〇✕)⑦

「ピアが強引に迫ってくるなら、僕だって強引な手をとるさ。

まぁ元々、出版前に誰かへ見せるものじゃないし、この機会だから止めようか」


「そ、そんなこと許されると思うわけ?!

実際、既成事実を作ればそんなことは関係なくなるわよ!」


必死に状況を打破しようと試みてくるが、僕は首を横に振る。


「その事実が発生した時点で、現時点では、僕はベールックさんに殺される未来が決定しているんだ。

地のはてまで逃げるに決まってるし、そうなれば原本もサラバだよ?」


「くっ!

……やっぱり、あの人を殺しておくべきかしら」


ベールックさんとの約束はピアも無視できない範囲であるため、では手の施しようが無いことを悟る彼女。

一回はベッドへうつ伏せるものの、ゆっくりと頭を持ち上げ、復讐に囚われた人形のごとく苛立ちを漂わせる。


言っていることはかなり物騒だが、思われていることは嬉しい。


僕はため息をつきながらも、ピアの頭にそっと手をおいて撫でた。


「今はその気持ちだけで十分だから。もし、ベールックさんに認められるような僕になったら、僕から気持ちを伝えるよ。

ね?」


「………ずるい」


そう呟き、ピアは僕の腕の中に飛び込んでくる。

ほのかに漂ってくるリンスの香りに、ドキドキしながらも頭を撫で直す。

昔と変わらず。


さて、そろそろ落ち着いたところで周りを見渡す。

壁の至る所がボロボロになり、棘がグサグサと。

まだピアの部屋だからこれで済んでいるが、僕の部屋はもっと悲惨なはず。


「今日はどこで寝ようかな」


「……寝るくらいだったら問題ないでしょ」


腕の中にいたピアは一瞬僕から体を離したと思うと、勢いをつけて戻ってくる。

そうして、勢いは圧迫でやってきて、次にはベットの上に僕を下として仰向けになる。


「~~~♪」


そうして、上に居寝る彼女は小さく鼻歌を歌う。


「これじゃあ―――「いや」……そうですか。

もう寝よっか」


退くように促すが、もう受け付けませんと寝る域に入られる。

僕としても、これ以上は疲れたので諦める。


最後に何回かピアの頭を撫で、ゆったりとした時間を過ごす。

いつの間にか寝息をたて始めたお腹の上の猫に、そっと「お休み」と言って、そのまま寝ることとした。

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