初夜(期待は〇✕)⑥
「こ、これまで言わなかったことだけど、僕にはいいなづけがいるんだよね」
「へぇ、誰の事?」
「僕の家があるキキニシャの子だよ。母さんが昔、馴染みのお客さんと勝手に決めたもので、破ることはできないんだ」
「ふぅん」
嘘全開のストーリーならどうにか逃げ切れる。
問題は、それに対するピアの行動だけだ。
大事になれば嘘がバレてしまうし、要らない噂がたつ。
だから、どうにかして展開を操作しないと―――っと考えていたが、何故かピアの余裕な表情が消えることはなかった。
何か確証を得る事柄が?
ピアの真意を突き止めようと考えを巡らせていると、本人の口から回答が述べられる。
「あんた、綴り家のくせに話の裏どりがお粗末よ?」
「いやいや、これは真実なんだから裏どりも何も……」
「悪足搔きね。まず、これは言っておくわ。
あんたのお母さまと話をした時、あんたの周囲に婚約関連の女がいないことは確認済みなの。
それに、あんたが私も知っている女の子以外に手紙等を出しているところ、見たことないし。あぁ、カリュアにも確認をとらせているわ。
私という綴り家の域を超えられなかったわね♪」
「……っく!」
自信満々でピアに向けていた顔を仕舞う。
全くの正論であり、嘘をこうも簡単に片づけられたため、自分自身が恥ずかしい。
それと、母さん!
どんな話をピアとしてるんだよ!!!
この時、僕に隠し事は難しいことを完全に悟ってしまった。
……しかし、これで負けるわけにはいかない。
最後のカードを切ろう。
背けた顔をもう一度戻し、笑みを浮かべる。
「な、なによ」
「これ以上のことを今するな……今後、原本をあげないよ?」
「なっ!!?」
迫っていた体を勢いよく起こし、ベッドの端に引き下がるピア。
僕の言う原本というのは、僕が綴り家として書いている物語の直筆原稿だ。
とあることを切っ掛けに、最初の読者はピアが担当することとなっている現状だが、それを釣り合いに出せば。
現に、威力は絶大なそうだ。
「どうして、その話になるのよ!」
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