初夜(期待は〇✕)①

勝手に決められて住み始めた部屋には、既に生活できるだけの家具が配置されていた。

部屋の大きさは、学生が暮らすには大きく、一人用のベッドが15床置けそうな程だった。


置かれいる家具を見ていくなかで、おかしな点が。


(どうしてベッドがキングサイズに?)


心地がよく、ゆとりを持った安眠の為と思えば済む話だが、嫌な予感しかしない。

実際、男としては良いことと思えるが、僕としてはまだ死にたくないのでごめん被りたい。


一通り確認が終わった後、ピアに呼ばれて夕食をとりに行くこととした。

まだ住み始めて1日目なので、夕食の食材が有るわけ無く、散策を兼ねての外食である。


日は既に落ちて、街灯の灯りがポツポツと小さくもとを照らす。

家から歩いて5分、大通りから一本路地に入ったところのレストランに入ることとした。というのも、大通りの店はどこも人が多く、思い切って路地を歩いていれば静かな店があるだろうと考えていた矢先に見つけた店だった。


扉は木で作られ、程よくつたが建物の壁を這う。そして、同じく壁にあったメニュー表には『店主のお任せディナー』という文字。

これに興味を持たないピアではない。


「ここ、良さそうじゃない。店の中から大きな声は聞こえないし、店自体も大きいわけじゃない。入りましょ」

「まぁ、確かに良さそうだけど。……わかった」


ピアを先頭に入ってみれば、扉に掛けられていたベルが『カラン』と鳴る。

1机に2つの椅子のセットが6セットあり、その奥にはのれんが掛けられた通路が続いていた。

そこからは「は~い」と女性の声が聞こえ、ピアよりも背が低い栗色髪の女性が現れる。

その女性の見た目だが、ドレスに近い給仕服で、なぜかそのスカートからは何かのしっぽのようなものが覗かせていた。

……なんだあれ?


不思議に思うも、初めて会う方に質問するのは無礼。

ここはおとなしく次に移ろう。


「2人ですが、よろしいですか?」

「大丈夫ですよ~。今のところは他にお客さんがいらっしゃらないし、好きなところへ。静かなところがお好みなら、特別室があるわよ~」

「いえ、だい「特別室でお願いします♪」……」

「ふふっ、わかったわ。せっかくの楽しい夕食なんですから、私たちも腕を振るうわ!」

「ありがとうございます! 行くわよ、リクラ」

「……仰せのままに」


『あらあら』と楽しそうな店員さんに続き、のれんの先へ僕たちは案内されるのであった。


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