前夜の会議

レガート専門校のあるエントバール、そのとある飲み屋。

少し癖のある匂いだが、つけだれの甘さと程よい焦げ目を効かせたバルチ肉を出す少し有名な飲み屋だ。


メニューも豊富で、今日も多くの人で賑わっていた。

その店のカウンター横には1つのドアがあり、ある特定の人物だけが入ることを許されていた。

常連の人にあの部屋はなんだと聞けば、こう答えてくれる。


『店主の飲み仲間だけが入れるお楽しみ室』だと。



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「最近、変わったことがあるか?」


酒を片手に持ち、隣で苛立ちたっている仲間へ質問する青髪の男。


「変わったも何も、奴隷が入ってこなくなったんだよ」

「あぁ? あの、ラガ・ダクト盗賊から買い付けていた女たちか?

今日、どっかの野郎が捕まって運ばれているって聞いてるが、まさか奴らなのかよ」

「あぁ。本当は、今日の夕方に新しい女を買いつける予定だったが、時間になってもこりゃしねぇ。

下っ端に探させたら、町の檻の中だ。

詳しく調べさせたが、街道で稼業中にある男女にやられたとしか分からなくてな。

くそ!」


苛立ちが増した上品そうな格好をした金髪男は、グラスを机に強く叩きつけた。

そんなか彼を見て、質問した男がニヤリと笑う。


「おまえ、そいつらのことを探すのか?」

「当たり前だ!

俺の楽しみをへし折ってくれた奴らだ。

礼を還さなきゃ、周りに変な噂がたっちまう。

男はペットの餌、女はいいやつだったら補償としてやる!!!」

「おっかない、おっかない。

そんなお前にがあるぞ」

「……なに?」


青髪の男は、金髪の男に右手を差し出し、人差し指でちょいちょいと動かす。

金髪の男は舌打ちをしながらも、金貨を5枚机に並る。


「まいど。

そいつらだが、今日、レガート専門校に入学した奴等だそうだ。

片方はダリアント家のお姫様。確か、ピア・ダリアントだったかな。

もう一人はよく分からんが、お姫様が懇意こんいとする奴らしい」

「……お前、どっからその情報を仕入れやがった」

「友達がいろんな所にいるんだよ。

そういうに」

「はっ、えねぇやつだ。

しかし、ダリアント家の者かよ。

迂闊うかつには手を出せねぇし、レガートの学生とはな。

住んでいる所を調べるしかねぇか」

「いや、そんな必要はないぞ?」


青髪の男は、ちょいちょいと再度やる。

それに対し、金髪の男はまた舌打ちをしながらも金貨を先程の倍並べる。


「明日、レガート専門校である行事が行われる。

その行事は学校外で個人ごとになるもんだから、やりやすい。

ピア・ダリアントでさえ、1人だったらどうしようもないだろう」

「……いいだろう。

しかし、あとは人手だな」

「おいおい、個々のマスターを忘れたのかい?」


そう言って青髪の男はテーブルの端においてあったベルを小さく鳴らす。


「マスターは『金さえあれば』の男だぜ?」


その後、二人の不敵な笑い声が聞こえ、夜は暗さを増すのであった。

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