お戯れ⑧

先輩方からの説明が一通り終わり、今日のところの専門校スケジュールは全て完了となった。


この後は、自由に校内を歩いてもいいし、寮住まいの人はそちらの説明会に出席などとなる。

僕も最初は寮暮らしと考えていたのだが、何処から漏れたかピアの耳に入り、強制的に独り暮らしとさせられた。

あの時の決め方は酷かった。



#-----


『リクラ、聞いたわよ! 寮暮らしするんだって!?

勝手に決めないで』

『ど、どうしたんだよ。住む場所は勝手でしょ』

『寮暮らしだと、ゆっくり話ができないじゃない!』

『いや、専門校でいいだろう?

そろそろ、人目が有るところで言い争うのも疲れてきたし、これからは仲良くやろうよ。

そうすれば、何時でも話せるでしょ』

『それはそれ、これはこれよ。

元々、あんたに決定権なんて無いんだから』


そういって、ピアがあるものをこっちに投げてきた。

それをキャッチして見てみると1本の鍵が。


『もう部屋は決まっているから♪』

『……ピアが住むような場所なんて借りるお金が無いよ?』

『大丈夫よ』

『ん?

それは、僕でも借りれて、静かな場所だということ?』

『えぇ。

その鍵の場所は―――』


#-----



そうして、今の目の前となる。

白を主体とした建物は気品さがあり、2階建ての建物だ。

敷地には建物以外に広い庭があり、魔術の練習にはうってつけそうだ。


「安くて、静かな場所よ?」

「……ここ、なんなの?」

「1カ月前に、私が買ったところよ?

元々は商家だったらしいけど、売りに出されていたから買って、内装を整えたの」

「買ったって……いや、それだけのお金が有るのか。貴族令嬢で、流行りの綴り家だったね」

「つべこべ言わないの。

ここに住むのはあんたと私だけ。使用人もいないんだから♪」

「はぁ!!?」


まさかの爆弾発言である。


「2人だけって。

因みに、1階は僕、2階はピアみたいな感じなんだよね?

集合住宅みたいな」

「普通の家よ」


返す言葉がすぐに出てこなかった。

これって……。


「これを機に、手を出したっていいのよ。

私はいつでも待っているんだから」

「今からでも探しに『それは無理』……なんでだい?」


建物に背を向けて歩き出そうとしたとしたら、目の前に僕の背丈くらいの棘が。

向き直すとピアは勝者の笑みをこぼす。


「寮の説明会はそろそろ終わる頃だから無理。

この町であなたが家を借りようと思えば、紹介人にはここを進めるよう言ってある。

この町周辺では野宿が禁止。

いい町ね♪」

「あぁ……僕の楽しい学生生活が。

……家賃は?」

「無料でいいわよ。その代わりに、朝食・夕食は一緒に取ること」

「何か怪しい」


ピアの顔を見つめると、笑顔で返される。


「あなたと暮らせるだけでいいんだから。

あ、因みに、あなたの荷物はもう運んであるから」

「はぁ、わかったよ」


諦めの境地だ。

荷物整理をするために家に入ることとした。


この時、ピアが不適の笑みを零していたのだが、その意味を知るのはもう少し後だった。

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