お戯れ⑦

「じゃあ、次は金髪のあなた」


そう指名されたもう片方に座る彼女は静かに立ち上がる。


「マイア・シーシェルです。私からも1つ質問が。

先輩方も参加されるとのことですが、それですと、上級生の皆様が有利となりませんか?

1年のSクラスとしても、全員が先輩方といい勝負になると思えないのですが」


マイアの思うことは確かに不思議と思うことで、現在も何人かが萎縮している状態だ。

そんな質問に対し、シルヴィア先輩は小さく微笑む。


「意味は2つある。

1つは君たちからとって上級生の判断力を鍛えるもの。

私たち以外の上級生は、君たちが1年Sクラスだと知らない。

『ペアレス』中の戦闘で、相手の力量を見極めることになる。

ここで上級生には1つハンデが設定され、下級生を戦闘不能としたら脱落というもの。

この時、君たち下級生が自分から『下級生だ』と宣言してはいけない。

そうした瞬間、タグの機能が働き、脱落となる」


シルヴィア先輩が楽しそうに話すが、所謂いわゆる、上級生は下級生を倒すことが出来ず、上級生は状況判断力を鍛える試験ということか。

ただ、これには1つ思うところがある。

下級生が先輩を倒すのはどうなのか。


僕の疑問に答えるように、先輩は説明を続ける。


「意味の2つ目は、君たち1年の力見極め。

魔術の種類によるけど、使用するときには注意が必要なもの。

ただ、今回は場が許してくれる。

上級生は、これまで学んできている分、対処ができるはずで、君たち下級生が全力を出していい時。

中には上級生より強い子もいるけど、その時は、上級生にとっては学べる機会となった、下級生にとっては、自信をつける材料になる。

心配は、どこにも要らない」


最後に言い切ると、シルヴィア先輩は右手でVサインを作る。

なんとお茶目と言いたいが、「何やってんだ」とシルヴィア先輩の横で呟いたサンクト先輩が、また絨毯じゅうたんと化していた。

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