お戯れ⑥

サンクト先輩がどうにか再起動した後、ワイガー先輩を含め3人で移動することとなった。


移動中、ワイガー先輩からは出身についてや、得意な魔術のことなどを聞かれ、楽しそうに反応してくれるので、つい話が弾んでしまう。


しかし、先輩たちは一向に別れることなく、僕が向かっている会場近くまで着いてきてしまう。


「先輩方、ここに用事が?」

「そう。

明日、新入生が実施する行事について、説明を行う」

「この専門校に入ったら、誰もが経験する行事だからな。上級生がそれぞれの会場で説明することになっている。

リクラ君のクラスはSクラスで一番優秀クラスだから、会長と俺が説明をする決まりになっている」

「こ、厚待遇ですね」

「厚待遇とは、少し違う。

クラスごとで行事内容が異なるから、上級でのSクラスの私たちが説明する」

「まあ、内容はまとめてすっから」


そうこう話していて、会場に着く。

何人かの生徒は喋っていて、休憩時間のようだった。

僕を先頭に入り、先輩方は会場前へ、僕は自分の席へ戻る。


席に着くと、ピアが頭を寄せてくる。


(どうして、学生会会長といるのよ!)

(いや、副会長のサンクト先輩もいるんだけど)

(あんたが、他の女といることを聞・い・て・る・の!)


そう言って、僕の靴を踏んで来ようと動作し始めたので、少し横に足をずらす。


(っと、あぶないなぁ)

(よ、避けるんじゃないわよ!)


「そろそろ始めていいか?」

「「!? はい……」」


いつの間にか、僕たちを見るように周りは静まり返っており、僕らは姿勢を正す。

それを確認したワイガー先輩はニコッと微笑み、会場全体に視線を向ける。


「ん。では、始める。

改めて、私はシルヴィア・ワイガー。

今日ここに来たのは、明日の予定を伝えに来たから。

明日は、レガード専門校伝統行事の『ペアレス』がある。

ペアレスは、一人一人がとある情報の書かれたタグを持ち、お互いに奪い合うゲーム。

これには、全学年のSクラスが参加するから、もしかしたら私と当たる人がいるかも。

質問は?」


会場が一瞬だけ静かな状態となる。

ワイガー先輩の喋りは、あまりにも端的で全員が「っえ?」となってしまった。


そんな中、隣で2つの手が上がる。


「じゃ、まずは赤髪のあなた」

「ピア・ダリアントです。1つ質問が。

タグは何に使えるのでしょうか?」

「タグは、集めていくと、とある場所にたどり着ける地図となる。

そこには毎年、学長が『なんでも1つ願いを叶える券』を配置している。

叶えてもらえる限度はある。

でも、『奨学金が欲しい』、『良い就職先を紹介してほしい』とかぐらいはしてもらえる」

「へぇ……」


何を思いついたかわからないが、それを聞いたピアは不敵な笑みを浮かべてこちらを見てくる。

な、なんだよ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る