お戯れ③
投影の魔術で映されている学長は、高等校の校長先生に比べると見た目は若く、40代といったところか。
茶髪で身長もそこそこあり、軍に所属していたのかという体格だ。
声にも張りがある。
「まずは入学おめでとう。
レガード専門校は君たちの入学を歓迎する。
それに合わせて、諸君らはこれから学友となるのだ。
注意事項を伝える。
本校に身分の問題は関係ない。専門校は多くのことを極め、納得できるまで問い詰める場所なのだ。時に自由、活発的に生活してくれ。
身分を盾に活動するものは、私に訴えてくるように。
あと『そろそろ』……うむ」
司会の女性に話を切られ、一度反抗されようとしたタースト学長だったが、彼女の笑顔が消えなかったことに話を終了させたようだ。
この学校、あの女性が一番の権力者なんじゃ……。
学長の話が本当に短く終わり、次の在校生代表の挨拶に移ろうとする。
その時、僕たちのいる会場の扉が開く音がした。
「リクラ・ウィントリンはどこだ?」
男性にしては少し長い髪で金髪の学生が開けた扉顔を覗かせる。
彼は僕を探しているらしく、顔をきょろきょろさせる。
「はい、自分がリクラです」
「おぉ、そこにいたのか、って主席だからそこだったな」
『ど忘れしていたわ』と呟かれつつ、僕の前までくる彼。
「俺はレガード専門校、学生会副会長のフルガ・サンクトだ。
新入生代表のお前を迎えに来たんだ」
「……新入生の挨拶でしょうか?」
「そうだ。受付をしていた事務員さんに言われてたろう?
この後、学生会会長の挨拶があって、新入生の挨拶になるんだ。
会場は、今映っているあの壇上だ」
サンクトさんが指した壇上状況を観て苦笑いしてしまう。
これまでの人生で、僕が主席になることなんて無かったからだ。
身分を理由に調整されることがほとんどで、僕としてもそれを受け入れていた。
しかし、今回のレガード専門校は違うらしい。
試しにピアの方を向いてみると、にこやかに返してくる。
そうですか、素直に行って来いと。
「わかりました。よろしくお願いします」
「おう、よろしくな。
胸を張って、『今年の新入生はすごいんだぞ!』って見せつけてくれ、リクラ君」
「はは……お手柔らかにお願いします」
ここは素直に従うこととしよう。
僕は立ち上がると、サンクトさんに先導して頂き、壇上に向かうのであった。
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