見極めと拾い物⑧
「そこまで畏まらなくても大丈夫です。さっきも言いましたように、私はあなた方と同じく専門校生となる身。対等な友達としての付き合いをお願いします」
「……わかりました。よろしくね、マイアさん」
ピアが名前を呼ぶと、彼女は首を横に振る。
「マイアっと呼び捨てで大丈夫です。友達なんですから、ピア?」
「……はぁ。わかったわ、マイア」
あのピアが一瞬で折れてしまった。僕相手では強気なあの彼女がである。
しかし、相手が隣国の姫、自分より身分が上なのだから逆らうことが得策ではないと考えたのだろう。
ピアの性格上、ずっとあのままだと耐えきれなくなるだろうし。
えっ、僕ですか?
平民なので、姫様を呼び捨てに出来るわけが無いじゃないですか。
現在も片膝を地面につけて、跪いていますとも。
…ピアに対しては別で。
「ピア、そちらの方を紹介頂けますか?」
ピアを通してマイア様からご指名がきた。
僕は平民なので、ピアに自己紹介を任せる。
「ここにいるのはリクラ・ウィントリン。身分は平民だけど、魔術・知識等に於いて大変優れている、私のパートナーです」
ピアからの素直な評価を聞いて、少し照れてしまう。
普段の彼女なら、そのようなことを言ってくれないので、貴重な体験だ。
そんな自己紹介を受けた僕であるが、マイア様より言い淀みながら質問がきた。
「ぱ、パートナーとは、どのような意味で?」
パートナーですか?
チームということですが、他にあるのでしょうか?
そんな質問に対し、意味を察したのか。
ピアが少しだけ笑顔になったのを振動で捉えた。
「パートナーとは、お互いを一生支え会うと意味で」
「つまり……夫婦!!?」
「将来的には。今は、まだ付き合いをしている仲で、私は何時結婚しても良いんだけどーーー」
そう言って、僕の爪先を踏んでくる。
いや、まだ付き合い始めてもいないんだけど。何時始まっていたんだい?
もしかして、生まれたときからとかは無しだよ?
しかし、ここで話を盛り上げていては被害が増える一方だ。
不躾な対応だが、実行するしかない。
「恐れながら申し上げます。私の魔術にて専門校に向かわれるのでしたら、そろそろ期限かと」
「「……え」」
「どれ程優れていようと限りがございます。このままでは間に合わなくなるかと」
「そ、それはいけません! 初日から問題を起こしては、お母様に叱られます」
「リクラ! 早く準備をして!!」
いきなり慌て出した2人は、僕の両腕を掴んで立たせる。
ピアに関しては、そこからの揺さぶりセットである。
よし、流れは出来た。
しかし、出発するには1つ問題があった。
「3人で行くとなると、この媒介じゃ無理だよね。……ピア、少し大きめの板を作ってもらえる?」
「板ね! ちょっと待っていなさい」
僕からの依頼に直ぐ取り掛かり始めたピアは、近くの木から枝を折り、それに対して魔術を展開した。
徐々に枝は大きく、平たくなり、遂には4人家族が使用するような机ぐらいの板となった。
「出来たわよ! はやく、早く!」
出来上がった板を直ぐ近くの地面に投げ捨てて、僕を板の上に連行していく。
そんな僕らを見て、マイア様が不思議に思われる。
「どうして、そんなことをしているの?」
「リクラの魔術で連れてってもらうからよ! マイアも早くこっちに来て!!」
僕に引き続き、ピアはマイア様の腕を引っ張って板の上に導く。
こうして僕を先頭に、マイア様、ピアの順番で縦並びになる。
ピアは合わせて、マイア様を巻き込むように僕の腰に抱きついて振り落とされないように対策するが、これ、背中にマイア様の……。
いけない、深く考えてしまっては。
「はい、しゅっぱーつ!」
「承知しました!」
こうなったらヤケだと、無理のない全力で魔術を展開し、移動し始める。
「え、え~~~!!!」
急加速した僕らは、マイア様の悲鳴と共にこの場を出発した。
これで間に合うと良いなぁ。
……いや、間に合わないと、ピアとのあの出来事がーーー。
僕は、少し無理をするくらいに魔術の展開量を上げ、さらに急ぐこととした。
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