見極めと拾い物⑥

合計で24人が捕まっていたことになる。

そのうち5人はまだ起きる様子もなく、3人の盗賊もいる。

最寄りの町村まで連れていくとしても難しい。


「私たちが乗っていた馬車があればよかったけど、壊されちゃっているし」

「そうなると、僕たちの中で誰かが人を呼んでくるしかないね。カリュアさんはわからないけど、ピアの魔術は長距離の移動に向いていないから、ここは僕が行ってこようか」

「私も長距離となりますと難しく。お願いできますでしょうか?」

「わかりました。直ぐに行ってきます」


近くの森を見渡して太めの枝を見つけた僕は、いつも通りに魔術で移動を始める。

始めに向かうのは僕らが襲われた場所で、たどり着いてから馬車の周りを散らばっているものを一つ一つ見ていく。


「お、あったあった。」


少し離れたところで父さんからもらった媒介板を拾い上げる。

見た目は傷ついている様子がなく、父さんが言っていたように頑丈のようだ。

家を出てから気が付いたことだが、そこら辺に落ちているものを媒介にするより、こちらで移動する方が魔術の操作をしやすかった。たぶん、魔術との適性が良い素材で作られているんだろう。


直ぐに移動を開始し、街道を来た方向と逆に進んでいく。

街道横が森だったことから、直ぐに町村は見えてこない。


「さて、どこかに無いかな」


移動し始めて5分。

街道両方が平原になったところまで来ると、行く先に移動する団体が見えた。

全員が馬で移動しており、装備を見る限り兵のように見える。

お互いが近くなるに連れて、向こうが速度を落としていく。


「そこの少年、止まりたまえ」


近くで見ると確かに兵であり、先頭の方をよく見てみるとダリアント領の兵だと分かった。

ダリアント領の兵装備は全体的に黒で統一されており、『黒軍こくぐん』と言われる人たちである。

魔術を解除して街道に降り立つと、隊長さんであろう人も僕の方をまじまじと見て、馬から降りる。


「君はこの街道を通ってきたそうだが……リクラ君であっているかい?」

「えっ、僕のことをご存じなんですか?」

「この時間に魔術で移動している者、もしくはダリアント家の馬車が走っていた場合はピア様と君、リクラ君だろうとベールック様より仰せつかっている。そして、『私が盗賊退治と依頼しているから、片づけを行うように』とも」

「はぁ。つまり、こうなることもベールック様は想定されていたということですか」

「想定? 君たちに直接依頼していたんじゃないのかい?」

「何も聞いていません。ダリアント家使用人のカリュアさんからは試験だったと先ほど聞きました。そのついでに盗賊退治を任されたという流れです」

「……まったく、あの方は。まぁ、今はいい。

君たちも専門校があるんだろう。急いで対処をしよう」


二人してため息をついた後、全員で盗賊の溜まり場だった場所へ戻っていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る