見極めと拾い物④
馬車が無くなって身軽になった僕らは、カリュアさんに導かれるまま森を進んでいた。森の中といっても草木分けていく様ではなく、獣道に沿って進んでいる。
「この道、人間が通った跡もあるわね。さっきの奴らが盗賊業をするときに通っているところかしら」
「そのようで。他にも幾つかの道を見つけておりますが、どこも何人かの足跡がありました。
足跡の中には子供のものがありましたので、捕まった人たちが連れていかれた場所にたどり着けると思われます」
そうして歩くこと数分、道の先に開けた場所を見ることができ、小屋のようなものが3棟建っていた。その側には3人が監視にあたっており、それぞれの棟に1人が就く状態だ。
全員が剣を所持しており、気怠そうながら入り口に立っていた。
「さて、どうしようか。3人いることだから、それぞれ1人でいいと思うけど」
「いいえ、リクラが手を出す必要ないわ。私に任してくれれば、一瞬で終わるわよ」
「さっきまでたくさんの媒介を使用していたけど、まだ残っているの?」
「え? ちょっと待って。(1、2、3……)8つあるわ!
これなら―――」
「それって、この後の学園までを想定していないよね。ピアにはさっきまで頑張ってもらったし、ここは僕に任せてもらおうか」
「わ、わかったわ。無茶はしないでよ!」
僕は彼女へ笑顔を向け、ありがとうと言いながら頭を撫でる。
「……えへっ♪」
彼女の頭から離した手と逆の手を地面に付け、意識を集中させる。
そして、目標に一番近い小屋の男から、その頭部へ移していく。
「少し、眠ってもらおうか」
地面を媒介として彼の頭まで繋げた意識は、彼の脳に振動を生み出す。
「! うぶっ!?」
突然揺らされた脳は一瞬にして意識を手放し、バタッと倒れる。
1人が倒れたことでその音に他の2人が反応する。しかし、動き出す前に処理をしていく。
地面と繋がっていて、視認できるならなんてことない。
先ほどまでの魔術に、カリュアさんが感嘆され、ピアは何か納得しないような表情を浮かべる。
「リクラ、どうやって倒したの? あんたのことだから振動でやったと思うけど、どこを揺らしたらできるわけ?」
「それは、人間の脳だよ。脳は行動処理を行う8割を担っていて、視覚、嗅覚は特に関係する。そこに対するダメージを与えると、通常起こりえない外圧となって体の処理を受け入れなくする。
生物学の賜物だけど」
「ふぅん。また精度が必要なことをやりのけて。流石、私の婚約者」
「お見事でございます、リクラ様。誰一人殺めず収められましたか」
「専門校に入るものならね。さて、中にいるであろう人たちを助けようか」
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