見極めと拾い物③

先程まで笑い顔だったカリュアさんは、真面目な顔で深々とお辞儀をされる。


「……つまり、これは何かの試験で、次いでに厄介事処理ということでしょうか? 下手をしたら、死ぬかもしれない相手で」

「試験については、そうでございます。ベールック様は、お二人が領から出られる最後に、把握したいと仰っていました。あなた方が、外でも通用するような人材なのかと」


先程よりもこちらを確かめるような目で見てくるカリュアさん。

なるほど。

つまり、『本当に危険なとき、相方を守り、人を殺めることが出来るのか』を試されていたと。

それと、力量も。


もしかしたら、現在の僕らがどれ程の力を有しているかの丈測たけはかりだったのかもしれない。


「わかりました。それで、カリュアさんから見て僕らは、如何だったでしょう?」

「十分かと。お二方とも、一人要れば一般魔術師10人分。2人要れば、計り知れないものだと感じました」

「当たり前でしょ。私は前衛、こいつは中後衛の繋がり。誰にも切れないことわりよ。そう、主人公とヒロインのような」

「でも、ピアの物語に殺傷事さっしょうごとは無いよね?」

「人が死ななくとも、話は盛り上がるものよ。物語の中くらい、全てが幸せであってもいいの♪」


楽しそうに僕の腕へ捕まってくるピア。

まぁ、本人が楽しいなら何も言わないけど、僕らの書く物語は似てるようで、根本的なところが違う。


「試験についてはわかりました。それで、厄介事については?」

「そ、そうよ!! 久しぶりにリクラとの2人空間だったのに」

「それは、大変申し訳ありません」


膨れた頬で怒りを表すピア。

カリュアさんは『こればっかり仕方ありません』と言いたげながら、笑って謝る。

僕としては、誰も怪我が無かったし、ベールック様の用事も済ませれた?らしいからいいけど。

ただ、少し疲れたので、ピアの膨らんだ頬を指で押す。


「お、やわらかい。こんな枕があると最高だなぁ」

「な、何を触っているのよ! これでも私は怒っているんだけど……触りたいのなら、両手で触って♪」


僕の両手を取ったピアは、自分の両頬へ手を導き、ニマッと笑う。


……行動を間違えた。

でも、気持ちが良いのは本当なので、少し頬を撫でる。


「あぁ、うちによく来ていた猫のパチを思い出す柔らかさ」

「っ!? 私を猫と一緒としないで。私は、あんたの飼い猫じゃなくて、妻になる者なの!」

「はいはい、その話はまた今度ね」

「くーっ、やっぱり父さんを消すしかないわ」

「それは私どもが困りますので、ご勘弁を。

あ、私はピア様のお味方ですので」


話が随分と逸れたので、咳をコホンとし、戻すこととした。


「それで、ベールック様はどうしてこれらを僕たちに?」

「はい、この街道はお二方が通われる専門校の都市と繋ぐ主要街道となります。

しかし、ここ数日で幾つかの商人が襲われ、女子供は攫われる被害が多発しておりました。近くの町の小隊が討伐として向かったものの返り討ちにあう結果で。

したがって、お二方の力量計り相手としてこの計画をされました」

「いい様に使われたっていうことね」


呆れてため息をつくピア。

確かに、厄介ごとを投げつけられたような感じである。

しかし、物事は終わってしまっているので、しょうがないところだ。


さて、さらに本題を聞こうか。


「カリュアさん、お仕事はこれだけですか? 

攫われた方々が残っていると思うんですけど」

「お見事です、リクラさま。ベールック様からは、『可能であればまで頼みたい』とのことです」

「ほんと、あの人を父親だと思いたくないわ。こんな危険なことにリクラを巻き込むなんて」

「しょうがないよ、困っている人がいるんだし。それに、僕の物語の題材にもなるから」


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