誘われて②

「君の力を借りれば、今の計画の1/3期間で安定化できるだろうが」

「僕はピアの幼馴染ですが、一般人です。大それたことなんてもってのほかですよ。今年、専門校を卒業された方々に素晴らしい方々がいらっしゃいます」

「そんなところで謙虚にならなくていい」


疲れ果てたと手を振り、僕に客用の席を進めてくれる。


「さて、今日来てもらったのは2点話をしたいことがあったからだ」


ライナックさんが準備してくれた紅茶を軽くいただき、話に耳を傾ける。


「1つ目は、今後の仕事だ。

専門校生となる君とピアは、以前よりも自由度が増し、力をつけてくるだろう。それに合わせて、仕事をしてもらいたい」

「具体的には?」

「難しいことではない。普通に講義を受けつつ、道中にをしてほしいんだ」

「怖い話ですね。ピアには可能でしょうけど、僕なんか」

「過度な卑下ひげ怠惰たいだの証だ。この家の者は君を認めている。

だからこそ、私は君にお願いをしたい。状況に見合った報酬もしっかり払おう」


そう言い、ベールック様がお菓子の入った器を僕に差し出してくる。

……断ることは難しいか。

いや、どちらにしても断ることはできない。僕の書いている綴りつづり話は、この仕事をもって書くことができている。

所謂いわゆる、無職になってしまう。


「はぁ、わかりました。その都度、お引き受けします」

「助かる。優秀な君の力が有ると無いで大違いだ。さて」


腰を浮かして、自身の席に戻っていかれるベールック様を目で追いかけると、鋭い視線をこちらに向けてくる。


「ピアとの関係はどこまで進んでいる?」

「どこまでと言われても。何も発展はありませんよ。外でのじゃれつきが過激の一途を辿っているばかりですが」

「ほぅ、力が増しているのか。それは安泰安泰。んだが!」


いっきに僕まで距離を詰めてくると、眉間にしわを寄せ、頬をピクピクと。


「君に娘を渡すにはまだまだだ。渡さないことが一番の夢だが、娘の気持ちが一番の優先事項。ゆっくりと強くなってくれたまえ」

「はは……僕の方も振り回されている者です。お嬢さんを説得してください」

「……はは、嫁と娘は美しく、可愛い。私はそれを守るだけ」


窓の外をみる主人をライナックさんは、苦笑いだけ向けられる。

期待すら皆無なんですか。

あくまでも上流階級の方なので、そのようなことを口にはしないが。

もうちょっとは頑張ってくださいよ。


「ピアとは、良き友人、同級生、綴り家仲間として過ごしていきますよ。それを超えるようでしたら、その時は―――」


ベールック様が僕の言葉にため息をつくが、苦笑いもしている。


「複雑な気持ちだが、楽しみにしている。

明日からが一歩目だが、楽しんで過ごしてほしい」

「今後ともよろしくお願いいたしま『終わったわね!買い物に行くわよ』―――はぁ。ベールック様」

「男の見せ所だ、頑張りたまえ」


あぁ、売りに回された。


この後、ピアに町中引き回された僕は、明日からの専門校生を待つのであった。


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