誘われて①
本日も晴天だが、僕の心は曇り空。
門番の方に話し掛けて、中に入れてもらった。
相変わらず大きな建物を前に道を進むと、玄関にて男の人が迎えてくれた。
「お待ちしておりました、リクラ様」
「お呼びいただき、ありがとうございます。僕みたいな一般人を、ライナックさんが出迎えてくださるとは」
「いえ。この家では、身分は1つの判断基準でしかありません。リクラ様はピアお嬢様、旦那様が認められた方なのですから、私を含めた皆がお待ちしております」
「過大評価ですよ」
手に持っていた「イイカ」という赤色の果物を使ったパイをライナックさんに渡す。皆さんで食べてくださいと言えば、『ご丁寧にありがとうございます』と頭を下げられる。
「では、旦那様がお待ちしておりますので、ご案内します」
「よろしくお願いします」
5人並んで入れそうなほど大きい扉を後に、2階にある書斎へ通される。
通路の各所には美術品が飾られ、幾らなのか気にしたくないものがたくさん並んでいた。また、いくつか増えていたし。
「久しぶりに会うな、リクラ君」
書斎の中央に大きな机に深紅色の髪をした方が座っている。
僕を案内してくれたライナックさんは机の隣に立ち、静かに控える。
普段なら僕が会えない立場の方なんだけどな。
「お久しぶりです、ベールック様。最後にお会いしてから半年ほどでしょうか」
「そうなるか。私も、今の役がなければここでゆっくりとしたいもんだが、どこかの馬鹿どもが全く静かにならん」
「馬鹿ども、ですか?」
「ああ。3年前に併合した領地の貴族達が、元親の「キーシャ」と内密に動いていてな。領民を安心させるため、何人かを残していたが駄目なようだ。そのうち、処罰しんといかん」
僕の前にいる方は、オルベス国の上将が一人の「ベールック・ダリアント」様で、ピアの父君だ。
国内に5つある上将家の一席をダリアント家が承っており、国内西部を統括している。
海に面した地区を有していることから、諸国との貿易が盛んであり、いくらかの島も領内に存在する。
僕が今日持ってきたパイの「イイカ」も、この地域の特産の一つ。温暖だからこそ、豊かな土地となっている。
そんな場所だからこそ、諸国から狙われることもあり、何度か争いが起きている。3年前は、隣国「キーシャ」と戦争一歩手前まで状況が悪化し、経済策によってどうにか勝利を収めている。その際の戦益として手に入れたのが新たな領地であり、いくつかの島々であった。
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