この先の考え②

「決まっているでしょ。あんたとけっこ『そういうことはいいんで』……ヘタレ」


最後まで言わせると流れが戻ってしまう。

不貞腐ふてくされ、新しく届いたケーキを頬張るピアを放置し、ケリスの方を見る。


「俺は、国務庁こくむちょうに決まってる。受験したら、受かっちまった」

「国務庁って、王国の各庁をまとめる総統みたいなところだったか?」

「そうそう。お給金や仕事環境はすごく良くて、仕事内容はすごく大変……」


ケリスは遠い目を始める。まぁ、国に関係するところだから、大変なのはしょうがない。


王国の各庁へ入るには、3つの条件が最低限必要となる。

①高等校以上を卒業しているもの。

②成績が優れている、もしくは特定人物からの推薦を受けているもの。

③王国に忠誠を誓うもの。


字面じづらだけだと入るのが簡単に見える。しかし、実際に働けるのは庁ごとに毎年3人と決まっている。

その中で、国務庁は各庁の体制をまとめる他に、王命に対する早期行動、緊急事態の司令部となる場所だ。

人気度は一段と高い。

それをこの友人は、『受かっちまった』で済ましている。僕にその知識、運等々を分けてほしい。

遠い世界から半ばだけ意識を返しているケリスは、ピアと同じくケーキを頬張り始めた。


「それで、ミリシャはどうだい?」

「私はギルドよ。父さんがギルド関係者……というかマスターだし、他の選択肢が許されなかった。ケリスみたいな庁に入りたいなぁって父さんの前でぼやいたら泣きつかれ、国務庁へ文句の手紙を出そうとして……疲れる」

「あぁ……お疲れ様。で、でも、ギルドの仕事も庁と似ているところがあるから、楽しいと思うよ」


国内の一般職をサポートする立場の『ギルド』。

その規模は王国の窓口というほど大きく、寄合所のような存在となっている。

ギルドを統括するのは設立当初からジャックス家であり、現在はミリシャの父『シャング』様が行われている。

一度、家に遊びに行ってお会いしたが、その際はなぜかギルドの闘技場で泣きと怒りの剣を向けられた。

終始「これは悪い夢だ!」と叫ばれていたが。


因みに、最後はミリシャが観覧席から先の無い槍をシャング様の頭めがけて投げ、気絶させた後にどこかへ引き摺って行った。

あぁ……引き摺る際の笑顔、怖かった。


ミリシャは自身の今後を考えていたが、自然とケーキに手を伸ばし、モグモグと食べ始めた。

そうですか、明るい未来が見えませんでしたか。


現在、僕の前には黙々とケーキを食べる3人となってしまった。

1人は関係ないが。


「まぁ、これからだよ。それぞれの仕事をしていくうちに楽しみが見つかるよ。高等校でもそうだったろ?」

「……確かにそうだろうけどな」


僕とケリス、ミリシャで苦笑いをする。


「リクラとピアは専門校への入学だよな。ピアはいいにしても、リクラは講義料払えるのか? 確か、それなりにしていたと思うが」

「それは大丈夫だよ。高等校時代に貯めていたお金で払えそうだし、今後も稼ぐつもり」

「おうおう、お金持ちか。そんなにあるんなら、ほしい装備が―――!?」


先ほどピアに遊ばれたウェールは、かすり傷とズタボロになって戻ってきたが、突如地面から延びた蔦に縛られ、地面に捨てられた。その際、実行犯はゴミを見るような目でウェールを見下し、不機嫌となっている。


「はあ? あんたのために使う金は1ピアも無いの。そのお金は、リクラと過ごすための資金よ」

「いや、専門校に通うための資金だから」

「あんたと一緒に入れるなら、同じことよ」

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